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Saturday, August 14, 2021

[論説]終戦から76年 学び深め平和つなごう - 日本農業新聞

 76回目の「終戦の日」を迎えた。戦争体験者の減少で風化が一層懸念され、当時をより積極的に学ぶことが必要になった。被害と加害の事実を検証し、今の平和がどれほどの犠牲の上に成り立っているか、その重みを知り、未来へと平和をつなぎ続けよう。

 戦時中、国民を苦しめたのが深刻な食料不足だ。農家は食糧の供出を強いられ、働き手を兵役に取られた農村は女性中心の労力で生産力が落ちた。供給が追い付かず、食糧増産のために国は、北海道や旧満州(中国東北部)に労働力として国民を駆り立てた。

 その中に、旧制の農業学校や農業系大学の生徒・学生がいた。「学徒援農」「報国農場」という旗の下、北方防衛と満州侵略に加担させられた。結果、過酷な労働で衰弱死したり、敗戦時の悲惨な引き揚げで命を落としたりした。

 農学を勉強し、本来の進むべき道へ希望を抱いていた若者は未来を奪われた。政府や軍部などの指導者をはじめ、戦争を推し進め、それに同調した“大人たち”の罪を顧みなければならない。

 そういった歴史を伝えようと福岡県立小倉南高校では、北海道に援農に行った先輩から話を聞き、その地を訪れ追体験する。東京農業大学国際農業開発学科では必須実習として1年生が、満州引き揚げ経験などを持つ先輩から当時の状況を教わる。学生は体験者から戦争の被害のむごさを、史実を俯瞰(ふかん)することで加害の側面を学ぶ。

 農業高校を対象に日本農業新聞が7、8月に行ったアンケートでは、学徒援農など戦争と農業や食との関わりを学ぶ機会を設けているのは1割にとどまった。7割が学びの意義を感じながらも、実施できていないことも分かった。主な理由は「時間がない」「詳しい教諭がいない」などだ。多様なカリキュラムをこなすので手いっぱいな中、平和学習への取り組み方に悩む実態が浮き彫りとなった。

 学びの場は学校に限らない。家庭や地域で戦争を検証しよう。あまりにもつらい記憶から口を閉ざしたままの体験者も多い。長い時を経て、「生き残った者の使命」だとして語り始める人もいる。その声を聞き逃さず、沈黙も受け止めたい。資料や遺構にも掘り起こすべき教訓がある。目を凝らし耳を澄まし、あらゆる場で学ぶ姿勢を持とう。

 命に直結する食は、国際協力の主軸にも武力紛争の原因にもなる。自然や動植物と日々向き合い食を育む農業者は、命の尊さを知っている。歴史は、命を支える豊かな農地は平和だからこそ守れることを教えている。食と農に関係する者として、平和のために何ができるか考えよう。若者が夢を描けなくなる時代を二度と繰り返さないために。

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