食卓の風景初めて想像
17年前に夫の隆生さん(50)と結婚して農家になった久美子さんは、ずっと目の前の作業に追われてばかりで、出荷したニンジンがどこへ行き誰に買われているのか、意識する余裕もなかった。それが、いつも自分がニンジンを詰めている同じ箱が東京のスーパーにあることを目の当たりにし、育てたニンジンを食べてくれる人の姿が初めて像を結び、その食卓の風景をも想像した。
矢も盾もたまらなくなった。1000人以上がフォローしている自身のツイッターで「関東のみなさーん、徳島の春ニンジンはこれからが最盛期でーす! どんどん収穫して関東に出荷してますから、なくなりませんよー!」と発信した。
4月24日、同町に赤澤さん夫妻を訪ねた。収穫は最盛期を迎え、ニンジンの青々とした葉が風に揺れていた。同町のニンジン農家は収穫後、自宅に併設した選果場に運び、「JA板野郡」と書かれた出荷箱に詰める。赤澤さん宅の選果場も、徳島ニンジン独特の甘くて濃い香りが満ちていた。
一家は6ヘクタールの畑を持つ、町内では中規模の家族経営のニンジン農家だ。隆生さんが15年前、父の後継者として就農した。だが、天候に左右されたり、中国産に押されたりするなどして収入が不安定で、何度もやめようと思った。続けてきたのは農家としての責任感だった。
2人が選果しながら言った。「運ぶトラックの運転手さんがいて、売る店員さんがいて、待つ消費者がいる。そんな当たり前のことを知った。よりおいしいものを作ろうという気持ちが強くなった」。久美子さんが続けた。「徳島ニンジンは、生サラダとして食べてもおいしいですよ」
自粛に疲れ改めて感謝
同じ頃、千葉市のスーパーでは、徳島ニンジンが販売のピークを迎えていた。
ニンジンは北海道、青森、千葉など関東、徳島、九州の順に産地がリレーするため、一年を通じて途切れることがなく、消費者は産地を意識することもない。
育児休暇中の会社員、渡辺ゆりえさん(29)は、緊急事態宣言下の外出自粛要請で公園にさえ行きにくい日々に疲れを感じている。一方で、週に1度と決めている買い物で今、スーパーに野菜がある安心感を思う。
価格はもちろん大事だが、農家、運ぶ人、スーパーの店員、それぞれに感謝する。「野菜は一年中あって当たり前だと思っていたけど、そうじゃないと分かった。わが子にも、スーパーの向こう側にある農業の大切さを伝えたい」
身近過ぎて意識されにくかった「食」が今、改めてクローズアップされ、作る人、食べる人双方に想像の翼が広がっている。(尾原浩子)
<メモ>
3月半ばから5月にかけての「春ニンジン」出荷量は、徳島県が全国1位。JA全農とくしまによると、2020年産の作付面積は822ヘクタール。鉄パイプの骨組みにビニールをかぶせるトンネルハウスで、冬に育てる独自の栽培が特徴だ。甘さや柔らかさが持ち味で、県内ではJA板野郡が最大産地。郡内のほぼ全域で栽培されている。
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May 03, 2020 at 05:04AM
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[新型コロナ禍 食と農] 作る「責任」、買える「安心」 今こそつながり実感 - 日本農業新聞
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