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Sunday, July 31, 2022

高齢者の熱中症 体調の“見える化”促せ - 日本農業新聞

 高温多湿の日が続く。農家の熱中症が気がかりだ。高齢者は特に体調の異変を自覚しにくい。体調を常時測定して“見える化”する技術は建設業界などで普及してきた。農業への導入効果を、研究機関などで検証してもらいたい。

 農作業中に熱中症で亡くなった事例は、ここ10年で計257人に上る。年によって幅はあるが、減る気配はない。しかも被害は、高齢農家に集中している。

 この傾向は他産業も同じだ。企業の環境改善を手掛ける労働安全コンサルタントの佐藤雅史さんによると、労働災害による熱中症の死者は、減少傾向にはなっていない。高齢者に多いのも農業と同じで65歳以上での発生は、25~29歳の3倍になる。

 高齢者が熱中症になりやすいのは、体内の水分代謝と関係する腎臓機能が低下していることや、暑さに慣れるのに時間がかかること、体調の変化を自覚しにくくなっていることなどが原因とされる。コロナ禍のマスク装着で危険はますます大きくなっている。

 農水省も対策を呼びかけている。作業中、定期的に休みを取り、水分を補給するなどだ。ただ農業での対応が難しいのは、現場では高齢者が単独で作業をするケースが多いことだ。周囲が対策に配慮しても、現場で判断するのは高齢者自身。体調の異変を自覚する力は乏しい。

 近年、熱中症が心配される建設業などで利用が進んでいるのが、腕などに装着して深部体温や心拍数などのデータを常時測定し、体調を“見える化”できるようにしたシステム。熱中症の兆しが表れれば、警報を出して本人や監督者に知らせる。

 熱中症の予兆を本人が自覚できないなら“見える化”して客観的に対応しようとの考え方だ。体調が悪くなっても言い出せなかった作業員でも、状態を公正に把握でき、重症化を未然に防げる。言葉が通じにくい外国人技能実習生の体調も把握できる。最新の機器を使っていることは従業員の健康に配慮しているとのアピールにもなる。

 建設業界で扱う装置を、高齢の個人農家が取り入れて活用できるか、検証が必要だ。命に関わる症状だけに費用対効果も含め、導入できる可能性はあるか農業分野でも検討したい。システムは簡易なものから多くの人数を管理できるものまで、機能も価格も多様だ。

 経営形態によって使い方はいろいろ想定できる。個人農家が取り入れて自身で体調管理をする、農業法人が従業員に装備させ、まとめて管理するなどだ。高齢農家は労働環境の改善や熱中症対策にまで気が回りにくい。JAや普及指導センターが主導し、取り組みを進めてほしい。

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