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Wednesday, July 6, 2022

東京農業 無限の可能性 - 読売新聞オンライン

 当初は近隣のスーパーなどに卸していたが、広大な農地で大量生産を進める地方の農家に太刀打ちすることは難しかった。各地の駅前やイベント会場で開かれるマルシェ(市場)に持ち込んだことが転機となった。「割高でも、顔の見える生産者から地元の野菜を直接買いたいと考える人が多い」と気づいたからだ。

 今では、市内外に16か所の畑計約2ヘクタールを抱え、スーパーでは見かけない「UFOズッキーニ」や「黒丸大根」といった珍しい野菜を含む40品目200品種を栽培する。とれたての野菜は都心部のマンション住民らの間でも評判となり、コロナ禍前後で宅配事業の注文件数は10倍に伸びたという。

 大消費地・東京という地の利も生かし、消費者と生産者の距離を近づける試みも始めた。自身の農園で農業体験会を開き、子ども向けの講演も続ける。「きつい、汚い、危険という農業の『3K』を 払拭ふっしょく し、一緒に農業に挑戦してくれる人を増やしたい」と意気込む。

 ただ、東京で農業を始めることは容易ではない。都農林水産振興財団に寄せられた20年度の就農相談件数は265件。16年度の89件からおよそ3倍に増えたが、実際に就農した人は2割未満の46人にとどまる。

 繁昌さんが始めた当時は多摩地域に耕作放棄地も多く、市の農業委員会から紹介された土地を借りることができた。だが、農家の高齢化や後継者不足で都内の農地は減り続けている。21年時点では6410ヘクタールで、1985年(1万2500ヘクタール)の半分だ。さらに、市街地にある農地の多くは、固定資産税などが優遇される「生産緑地」。18年に規制が緩和されるまで、就農希望者が借りることは困難だった。今でも所有者が宅地化を希望すれば返さなければならず、長期的な経営計画を立てづらい。

 地価の高い東京で、畑とは別に作業場を確保する必要もあり、希望に沿う土地が見つからずに近隣県の千葉や神奈川などに向かう人も多い。繁昌さんは「都内で増えている空き家を活用する手もある」とし、「自治体側も農地担当と空き家対策を担う部署が手を組み、縦割りを打破するような工夫が大切だ」と指摘する。

 農業が心身に与える効果を調査する実験に協力し、「畑仕事で得られる幸福感は大きい」との結論が出た。環境循環型の施設をつくって魚の養殖と農業を同時に行い、子どもたちの学習の場とする構想も温めていて、「巨大な情報発信地である東京は、様々な業種との連携もしやすい」と強調する。東京の農業に大きな可能性を見いだす繁昌さん。「国や都、市区町村は農地の確保や就農希望者への手助け、技術支援に戦略的に取り組んでほしい」と訴える。

 渋谷区にある就農支援団体「都農業会議」は2012年、都内の新規参入者や研修者ら約100人による「東京NEO―FARMERS(ネオファーマーズ)!」を発足させた。

 情報交換から始まった活動は広がりを見せ、新規就農者団体と障害者福祉施設が共同運営する全国初の常設直売所が6月、八王子市にオープンした。今後、市内の障害者福祉施設が借りる農地の「農場長」にメンバーが就任して障害者にノウハウを教え、収穫した野菜を一緒に販売する。「農福連携」と呼ばれる先進的な取り組みだ。

 店頭にはメンバーが自身の農園で育てた野菜も並び、同会議の松沢龍人業務部長(54)は「障害者の自立支援策に農業を取り入れたい施設、販路を増やしたい農家の双方に利点が生まれる」と胸を張る。

 限られた土地を有効活用するため、ビルの屋上を農地化する取り組みも進む。都市緑化大手「東邦レオ」(大阪市)は、東京など7か所で貸し菜園を運営する。JR新宿駅の駅ビル屋上の「ソラドファームNEWoMan」では、3平方メートルから菜園を借りて野菜を育てることができる。約40区画はすべて埋まるほどの人気で、畑仕事の第一歩として利用する人も多い。

 事業担当の山口薫さん(47)は「都市部で『ミニ農業』が体験できる貸し菜園のニーズは高い。家族や利用者同士の交流にもつながり、単なる金銭的利益を超えた価値がある」と話す。

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