菅義偉首相は27日、首相官邸で開いた新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、旅行需要喚起策「GoToトラベル」事業について、感染が拡大する札幌・大阪両市から出発する旅行に関しても利用を控えるよう呼びかけた。予約済みの旅行のキャンセル料は、利用者やホテルなどに負担が生じないようにする。政府は両市を目的地とする旅行への割引適用を12月15日まで一時停止しているが、両市を出発する旅行は割引を停止せず、12月15日まで自粛を求める。
出発分の停止は、政府の新型コロナ対策分科会が25日に提言していた。27日は東京都で新たな感染者が570人報告されるなど、全国で感染の拡大傾向が止まらず、政府はさらなる対応を迫られている。首相は会合で「分科会からの提言を踏まえ、札幌市、大阪市について、出発分についても利用を控えるよう直ちに呼びかけることとする」と述べた。
これに対し大阪府の吉村洋文知事と北海道の鈴木直道知事は27日夜、国の要請に同意する意向をそれぞれ表明した。吉村氏は府庁で記者団に「国と協力して感染拡大を抑えないといけない。利用の自粛を市民にお願いしたい」と語った。鈴木氏も、利用者や事業者に対する混乱への対応策を国が講じることを条件とし、「事業者への影響は大きい。混乱が生じないような対応を打ち出さないと成り立たない話」と述べた。
西村康稔経済再生担当相は27日夜の記者会見で、利用者のキャンセル料負担をなくし、事業者に旅行代金の35%分を補塡(ほてん)する制度を検討していると説明。出発分の割引を停止しないことについて「システム上も一人一人確認することは不可能」と語った。一方、政府は人口、感染者数とも最大の東京都を一時停止や自粛要請の対象としていないが、官邸幹部は「東京の医療体制はまだ逼迫(ひっぱく)していない」と話している。
また首相は対策本部で、分科会の提言を受け「飲食店の営業時間短縮が極めて重要だと考えている」との認識を強調した。札幌市に加え、東京都や大阪・名古屋両市で営業時間短縮を要請していることに触れ、「協力いただいた全ての店舗に対して国としてしっかりと支援する」と述べた。
一方、分科会の尾身茂会長は27日の衆院厚生労働委員会で、現在の急速な感染拡大を抑えるには「個人の努力だけに頼るステージは過ぎた」との認識を示した。尾身氏は「飲食店の営業時間の短縮、感染拡大地域とそうでない地域との移動をなるべく控えることが、人々の努力に加えて極めて重要な時期に、今まで以上に差し掛かっている」と述べ、政府や自治体の対策強化の必要性を強調した。
また、西村康稔経済再生担当相が今後の感染状況の推移について「どうなるかは神のみぞ知る」と発言し、「尾身先生の発言を引用したもの」と釈明したことに関しては、「感染状況を評価するためにいろいろな指標を使っているが、実際に本当に何が起きているかを知っているのは、比喩的に神のみぞ知ると(言った)」と説明。「神のみぞ知るけど、そこになるべく近づくためにいろんなデータの分析が必要だと。そういう文脈で申し上げた」と述べた。立憲民主党の中島克仁氏の質問への答弁。【川口峻、金秀蓮、山下智恵、芝村侑美】
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