「農業の憲法」といわれる食料・農業・農村基本法の見直し作業が本格化する。先の農業基本法から変わって20年余り。食料、農業、農村を取り巻く環境はどう変わったのか、俯瞰(ふかん)してみよう。
縮小の脱却を
まず食料から。輸入依存を強め、カロリーベース食料自給率は40%から38%(2021年度)へ、生産額ベースも72%から63%(同)に下がった。そして、食べられるのに捨ててしまう食品ロスは500万トンを超す。経済連携協定(EPA)や環太平洋連携協定(TPP)など農畜産物貿易の自由化が背景にある。
次に農業。生産基盤の弱体化が進んだ。基幹的農業従事者はここ20年で半減。487万ヘクタールあった農地も10%減り、農業総産出額は9・4兆円から8・8兆円(21年)に減少した。
最後に農村。少子高齢化が加速し、人口は急減。324万あった農家数は175万(20年)に半減した。高齢化は都市より先行。若い世代に田園回帰の兆しも出てきたが、東北の農家は「多くの集落で空き家が目立つ」と嘆く。
基本法は食料・農業・農村の3部門で均衡ある発展を目指したはず。この縮小状態からどう抜け出すか。
調和取れた国へ
政府が期待を寄せる一つが輸出だ。少子化で縮小する国内需要を補うため、「人口増加や経済発展に伴って需要が増える海外の市場を目指す」(農水省大臣官房)という。農林水産物・食品の輸出を30年までに5兆円に伸ばす方針を掲げる。目標通りに輸出が増えれば、「農地や農業経営体など生産基盤の維持拡大につながり、食料自給率向上に貢献できる」(同)と意気込む。
しかし、過度に輸入に依存する考え方を変えない限り、食料安全保障の確立にはつながらない。その気づきをもたらしたのが、新型コロナウイルス禍とロシアによるウクライナ侵攻だ。穀物輸出国の輸出規制で国際価格が高騰し、東京大学大学院の鈴木宣弘教授は、「安定的な輸入は幻想であることを浮き彫りにした」とみる。
政府は輸入先の多角化と国産への切り替えで乗り切る考えだが、経済大国に成長した中国に、日本が買い負ける事態だ。肥料の輸入先も限られる。地球上の人口は80億人に達し、中国やインドでの人口増加も続く。100億人に達するのも時間の問題だ。「食料収奪」の時代を告げる。
加え、地球温暖化に伴う異常気象が多発し、食料生産を脅かす。収奪農業には限りがある。それぞれの国が環境に優しい農業に取り組む必要がある。基礎的な食料は自国で生産する「食料主権」が大事な時代だ。
安倍政権から続いた家族農業を軽視する政策は行き詰まっている。競争をあおる新自由主義の幻想から目覚め、都市と地方が調和の取れた国土づくりを目指さなければならない。
岸田文雄首相が唱える「新しい資本主義」は、「成長」を重視する余り、新自由主義に里帰りしたとも取れる。農業と農村そして農業者を重視する政策へ大胆にかじを切るべきだ。
農の豊かさが要
農水省は昨春、「みどりの食料システム戦略」を打ち出した。50年までに化学農薬を5割削減し、有機農業を100万ヘクタールにする野心的な目標を描く。欧米の動きに合わせたものだが、その精神を基本法にしっかり位置付ける必要がある。
性差や年齢、出身地などの違いを超え、多様な人が農村で暮らし、豊かで文化的な自然と調和の取れた田園を築く。そんな豊かな国つくりの長期ビジョンを持たなければならない。
日本と同様、耕地面積が限られるスイスでは、憲法に食料安保条項を設け、農地の保全や自然資源を生かした食料生産を目指す。輸入に依存することは、国土を支える農業の縮小につながる。
命を育む農業・農村の豊かさは、国の豊かさの指標でもある。
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January 03, 2023 at 03:11AM
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[いのちの安全保障](2)農業の憲法 「食の主権」 取り戻す時 - 日本農業新聞
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