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Tuesday, November 1, 2022

農のある街づくり 市民協働で価値発信を - 日本農業新聞

 今日は「都市農業の日」。都市農業を守り、生かすには、市民や民間組織など多様な担い手の参画・協働が欠かせない。農と住が共生する街づくりは、新鮮な農産物の供給だけでなく防災、食農教育、食料安全保障につながる。都市農業の価値を生産者と消費者で共有し発信しよう。

 担い手不足や高齢化は都市農業も例外ではない。市街化区域内農地が年々減少する中で、下支えしてきたのが生産緑地だ。30年の営農継続を条件に税制優遇を受けてきたが、その8割の約1万ヘクタールが今年期限を迎える。これが一挙に宅地化すれば優良農地が失われ、不動産価格の大幅下落を招く恐れがあった。この「2022年問題」を防ぐため、政府は「特定生産緑地制度」を創設。指定を受ければ10年ごとに延長でき、税制優遇を継続できる。生産緑地を第三者に貸しても相続税納税猶予を引き続き受けられる。

 こうした法制度、税制改正の追い風を受け、自治体、JAなどが対象農家に特定生産緑地の指定を働きかけた結果、指定済み・指定見込みは約9割に達した(6月末時点、国土交通省調べ)。年末に向け最後の上積みを期待するが、この間のJAなどの地道な相談、支援活動が実を結んだ成果だと評価したい。

 地方都市での生産緑地指定も急ぎたい。近年、地方の市街化区域内農地の固定資産税が上昇、農業経営を圧迫しており、税制対策からも指定は有効だ。全国13都市で生産緑地の指定(3月現在)が進むが、取り組みを加速すべきだ。JAと行政が連携して生産緑地制度を導入した広島市の取り組みは好例といえる。

 最大の課題は、誰が都市農業の担い手、支え手となり、どんな利活用をするかだ。都市農地活用支援センターが東京都内で開いた講演会では、市民参加型で多様な担い手を発掘することの重要性が指摘された。新型コロナウイルス禍や世界的な食料危機、身近な物価高などを背景に、住民の都市農業への理解や関心は高まっているという。

 市民農園や体験農園が盛んな東京都練馬区は、区内に「農の風景育成地区」を設け、農家と住民が協働して、農のある街づくりに取り組む。地区内の農地を巡るスタンプラリー、収穫体験、地元野菜を使う飲食店、キッチンカーの出店、防災協力農地での炊き出し訓練などで、理解と交流を深める。さらに維持・保全から一歩進み、都内では、駐車場を生産緑地や市民農園に転換し、新たな農地を作り出す動きも出始めた。

 国交、農水両省の担当者は「食料安全保障の観点からも都市農業は重要な役割を果たしている」という。畑と台所を結ぶ身近な都市農業を街ぐるみで育てていきたい。

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