「農」の未来を担う人材を数多く送り出している東京農業大学(東京都世田谷区)。最先端の技術研究と同時に、江口文陽学長が強調するのは、人間のなりわいとしての農業の継承だ。世田谷キャンパスを訪ねた。
田植えに寄ってくる学生
――東京農大は「実学」に力を入れています。
◆先日、朝5時半からキャンパスにあるほ場で田植えをしました。すると、学生が寄ってくるんですね。「先生、何やっているんですか」と。みんな、目が輝いている。僕が田植えをしていることを奇異に眺めるのではなく、そこから何かを感じ取ろうとする彼らの力が、ヒシヒシと伝わってくるんです。この感受性こそが、「実学」の基礎だと思います。
農家を指す「百姓」という言葉があります。それをひもとくと、なりわいとして、農に関する「百」のことを知っている人、という意味につながります。「百学者」と言い換えてもいいでしょう。「なりわいとしての農業を伝承していく」。これが農業における「実学」の使命だと私は考えます。
農家の方に「何を作っているんですか」と尋ねると、「土を作っているんだよ」と返されることがあります。「百」ある中でも、やはり基本は「土」。象徴的な言葉です。実学として、その「土作り」を担うのが本学です。
ゼネラリストもスペシャリストも共存
――一方で、先端技術の発展があり、農業生産性の向上が農政の課題です。
◆当然です。IT(情報技術)やAI(人工知能)、バイオテクノロジーによって、農業の未来は描かれます。本学はその推進を担います。
同時に、「間口の広さ」も農業の特色です。「昔ながらの農業」を伝承していく懐の深さを持ち合わせている。ゼネラリストもスペシャリストも共存できる世界です。
さらに大切なことは、消費者の理解が広がることです。生産性と切り離した部分にこそみえる農業の価値への理解です。生産者の顔が見える農産物の提供、農村の環境、農村との交流など、さまざまな形があります。
――その意味で、毎日農業記録賞は、消費者の視点も盛り込んでいます。
◆うまいものを食べた学生が「今度は自分が『食』のために動いてみよう」と話すのをよく聞きます。このような瞬間から、消費者と生産者のつながりが生まれます。
毎日農業記録賞の価値は、瞬間、瞬間の出来事が、時空を超えて、記録として残ることにあると思います。
――コロナ禍やウクライナ戦争は、「農」や「食糧」の環境を激変させました。
◆なりわいという言葉を何度も使いましたが、地球上から農業がなくなったら人類は生存できない。そして、平和でなければ食糧の安定供給は途絶えるし、戦場では農業生産そのものができない。その意味で、「平和ボケ」では農業は考えられない。そのことを再認しました。【聞き手・三枝泰一】
第50回毎日農業記録賞
作文を募集しています。9月2日締め切りです。詳しくはホームページ(https://www.mainichi.co.jp/event/aw/mainou/guide.html)
第6回全国高校生農業アクション大賞
募集は6月30日締め切りです。詳しくはホームページ(https://www.mainichi.co.jp/event/nou-act/index.html)
えぐち・ふみお
1965年、群馬県生まれ。88年、東京農業大農学部林学科(現・森林総合科学科)卒。93年、同大博士後期課程修了。高崎健康福祉大教授などを経て、2012年、東京農業大地域環境科学部森林総合科学科教授。21年、学長就任。
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June 25, 2022 at 07:30AM
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第50回毎日農業記録賞×聞く:「なりわいとしての農業伝承が実学の使命」 江口東京農業大学長 - 毎日新聞 - 毎日新聞
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