2022年2月、IoTNEWSの会員向けサービスの1つである、「DX情報収集サービス」の会員向け勉強会が開催された。本稿では、その中から株式会社セラク 持田宏平氏のセッションを紹介する。
日本は、人口減少や少子高齢化の影響で、デジタルを活用した労働生産性の向上が早急に必要だ。その影響は、もちろん農業にも及んでいる。そこで注目されているのが、デジタルを活用した新たな農業、「スマート農業」である。
そこで、株式会社セラク(以下、セラク) みどりクラウド事業部 事業部長 持田宏平氏に、農業における課題や、同社のサービス「みどりクラウド」を用いたスマート農業について、事例を交えながらご講演いただいた。
日本の農業が抱える3つの課題
1.制御困難な自然環境下での生産活動
1つ目の課題は、農業の生産活動は、変化の読めない自然環境下で行われることだ。
異常高温や平均気温の上昇といった環境変化は、農作物の生育に影響を及ぼす。例えば、お米は、気温が上がると高温障害によって白濁してしまい、商品価値が下がるのだそうだ。その他にも気温の上昇は、害虫の発生や土壌環境の悪化を引き起こす。また、農作物は害獣の被害を受けることもある。農業現場は、このような不安定な環境下に置かれているのだという。
2.負荷の高い労働・労働力の減少
2つ目の課題は、農業自体の労働不可が高く、さらにその労働力が減少していることだ。
農林水産省は5年おきに、年齢ごとの農業従事者数の統計を発表している。その統計によると、平成17~22年の10年間、どの年齢帯でも農業従事者数は減少している。今後ますます限られた労働力で、安定した生産をする必要がある。
3.儲かりづらい産業構造
3つ目の課題は、農業業界の儲かりづらい産業構造だ。
生産者が作った農作物が、消費者の手に届くまでの商流が非常に深いのだという。出荷団体・卸売業者・仲卸業者・買出人・小売など、多くのプレイヤーが商流に介在し、物流コストも高くなる。この影響で、どうしても生産者の利益率は低くなってしまうという。
農業の課題解決へ向けたスマート農業とは
農業の3つの課題をいかに解決するのか。その解決法は、データを駆使したスマート農業だと持田氏は語る。
データ活用の第1ステップは、可視化である。農業の現場を定量的に可視化することで、現状を正しく把握することができ、リスク回避行動につながる。そのデータを文字や数字、画像として効果的に共有することで、人材育成や農業への参入障壁低下につながる。
また、データを活用することで、これまで人間が下してきた判断を機械に置き換える自動化も可能だ。自動化は省力化につながり農業の生産性を向上させる。さらに、AIや統計モデルを用いて比較・分析を行うことで、生産技術が向上する。
この一連のデータ駆動農業こそスマート農業だと持田氏は述べた。日本の農業が抱える3つの課題に対する解決策となりうるのだという。
スマート農業実現に向けたセラクのソリューション
スマート農業の実現に向けて、セラクは「みどりクラウド」を展開している。「みどりクラウド」には様々なサービスが含まれるが、その中で3つのサービスを紹介する。
1.みどりボックス・みどりモニタ
まず、みどりクラウドのベースとなるサービスが、「みどりボックス」と「みどりモニタ」だ。みどりボックスで、栽培に関する様々な環境情報を取得し、みどりモニタで、取得した情報をスマートフォンやパソコンから確認することができる。
みどりボックスは、1台に36個のセンサが付いており、有線・無線両方に対応している。また、24時間365日2分ごとに計測しており、計測された情報はみどりクラウドに保存されている。
みどりモニタでは、その収集したデータをどこにいてもスマートフォンで確認できる。気温・湿度・風速・CO2濃度など各項目を時系列表示できるほか、気温と日射量など複数項目を同一グラフ上に時系列表示し、比較分析することも可能である。
畑に何か異常があれば、みどりボックスが感知し、すぐにみどりモニタで確認できる。警報によるリスク回避は、最大のメリットなのだという。
2.環境制御オプション
「環境制御オプション」では、計測した値に基づいて、温度や湿度など施設内の環境を遠隔コントロールすることができる。スマートフォンアプリでリアルタイムに設定を反映させることも可能だという。
遠隔コントロールによって、現場に行かずとも温度調整など設定することができる。1日の内に、何度も施設内の設定を変更する施設もあるので、遠隔コントロールは、管理工数削減につながり、大きなメリットとなる。
3.みどりノート
「みどりノート」では、農業生産の計画を立て、それに紐付いた記録を付けることができる。中でも、農薬や肥料の計画は重要なのだという。例えば、収穫直前に使用してはいけない農薬があり、誤って使用すると販売できないケースも存在する。そういった状況を防ぐメリットがある。
みどりクラウド事例紹介
事例1 トマト農家で3000万円の損失をリスク回避
トマト農家の事例では、みどりボックス導入によって、3000万円の損失を回避できたという。トマトが生育するハウスでは、自動環境制御装置が入っており、温度が下がると自動でボイラーが作動し、温度を上げる。ある時、ブレーカーが落ちてボイラーが作動しなかった。それをみどりボックスのセンサが察知し、難を逃れたのだという。気づかないまま放置していたら、トマトは全て植え替えする必要があり、その損失額は3000万円にも及ぶ試算だったという。
事例2 データ活用で農業従事者の育成
島根県と手を組み、みどりボックスを活用し、農業従事者を育成する取り組みがある。島根県内のミニトマト・アスパラガスの就農者全員にみどりボックスを配布したのだという。これによって、可視化したデータに基づく遠隔指導を行うことができる。データをもとに生産できるので、新規就農者でも早くノウハウを得て自立できるようになるといった狙いがある。
スマート農業に向けた今後の取り組み
セラクは、農業流通の支援や畜産分野にも注力している。今後より一層、⼀次産業のデジタルトランスフォーメーション推進を支援していく。
最後に、持田氏は、「今後は、限られた労働力で高い生産性を実現する必要がある。そのためにもデータを集めることからスモールスタートし、課題解決に向かうことが重要だ。」と講演を締めくくった。
法人向けDXトレンドが学べる、DX事業支援サービス
IoTNEWSの運営母体である、株式会社アールジーンでは、DXを行う上で必須となる、「トレンド情報の収集」と、「実戦ノウハウの習得」を支援するためのサービスを提供しております。
本稿は勉強会のダイジェスト記事ですが、実際の勉強会では、IoTやAIの現場を担当している有識者からさらに深い話を聞くことができ、直接質問する事ができます。
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大学院卒業後、メーカーに勤務。光学に関する研究開発業務に従事。新規照明技術開発を行う。2021年4月に入社し、DXの可能性について研究中。
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