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Tuesday, February 1, 2022

農業者の自殺防止 サインに気付く体制を - 日本農業新聞

 300人の農林漁業者が毎年、自ら命を断っている。病気や事業の不振などが原因・動機として挙げられる。周囲が自殺の兆候に気付き、専門家への相談など支援につなげる体制づくりが急がれる。

 厚生労働省などによると、農林漁業者の近年の自殺者数は2019年が304人、20年が309人、21年が11月までで272人。原因・動機として20年は、身体の病気やうつ病、事業不振、仕事疲れ、多重債務などが多かった。

 また東京大学大学院医学系研究科の調べで、酪農・畜産産出額の高い地域で自殺率が高いことが分かっている。

 この研究に携わった同研究科博士課程の金森万里子さんは、①担い手不足や国際競争に対応するための過重労働やストレスの増大②農村では家族・近隣以外のつながりをつくりにくい③男が家を継がなくてはといったプレッシャー──などが、自殺の要因につながると分析する。

 JAによる対策は始まっている。その一つが、政府が推進する「ゲートキーパー」の養成だ。悩んでいる人に気付き、声を掛け、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守るといった適切な対応ができる人のことを指す。特別な資格は不要で、研修を受けるなどして知識を身に付ける。

 酪農地帯にある北海道のJA道東あさひは、自治体などと共に別海町自殺対策推進協議会を組織。役職員を対象にゲートキーパーの研修を行っている。本年度までの3年間に延べ約140人が受けた。2度目となるスキルアップ研修を受けた管理職もいる。

 別海町は、人口10万人当たりの自殺者数が全国に比べて高い傾向にある。

 一方、JAの役職員は、経営などの相談や窓口業務などで農業者らと接する機会が多い。ゲートキーパーとして養成し、メンタルヘルス不調の兆候がある人に早く気付き、町民保健センターにつなぐ体制を整えている。同保健センターは、実際にJAを通じたメンタル不調の相談につながっているという。

 一般企業ではメンタルヘルス対策を早くから進めているが、農業分野は遅れているとの指摘がある。農業法人などが雇用している労働者はもとより、家族経営を含め農業者自身への対策も必要である。

 世界的に農業者はうつになりやすく、自殺者の割合も高い傾向にあるとされる。農業者がメンタル不調になったり、自殺したりすれば経営は立ち行かない。そういった農業者が目立つようになれば、農業に憧れや関心を抱く若者も離れてしまい、新規就農者の確保も難しくなる。

 農業者と接する機会が多い行政、JA、生産資材メーカーなど官民が連携し、命を守る仕組みを構築すべきだ。

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