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Sunday, October 31, 2021

宇宙農業の今、そして未来へ:時事ドットコム - 時事通信

月面長期滞在、火星有人探査に欠かせない技術

2014年にISSに搭載された栽培装置「ベジー」[NASA提供]【時事通信社】

2014年にISSに搭載された栽培装置「ベジー」[NASA提供]【時事通信社】

 米国では民間企業が有人宇宙飛行を成功させ、中国は国際宇宙ステーション(ISS)に匹敵する有人宇宙ステーションの建設を進めるなど、宇宙分野での技術開発が活発になっている。宇宙開発というと、ロケットや人工衛星などの技術開発に関心が集まりがちだが、それらに勝るとも劣らない重要度を持つ技術として「宇宙農業」が挙げられる。数年間にも及ぶ宇宙滞在に必要な食料をすべて地球から持っていくことは現実的ではなく、宇宙船内での自給自足が欠かせない。今後挑戦が進むであろう月面での長期滞在や火星への有人飛行には欠かせない技術なのだ。

 まず、宇宙農業の歴史を振り返ってみよう。この分野の研究は、旧ソ連と米国による本格的な宇宙開発が始まった頃から重要性が認識されており、1950~60年代にはすでに手が着けられていた。この頃、宇宙船内でクロレラなどの藻類を栽培し、食料や酸素発生に利用する技術が研究されたが、消費電力などが採算に合わないという理由で、実用化には至らなかった。

 58年には、米国で人間が宇宙に滞在する際に必要な食料となる野菜のリストが作られた。条件は、少ない光でも生育し、狭いスペースで収穫の多いことで、サツマイモ、レタス、ハクサイ、キャベツ、カブ、カリフラワーなど13種類がリストアップされた。

 60~70年代には、宇宙農業を含む宇宙プログラムに米軍も参画し、発光ダイオード(LED)などの人工光による生育や栽培空間デザイン、水耕栽培などの試みが行われた。そして80年からは、米航空宇宙局(NASA)によって、外部から水や酸素などを供給できない、宇宙船と同じような閉鎖環境で植物を栽培する実験が行われた。コムギ、ジャガイモ、ダイズ、レタスなどが水耕栽培され、多くのデータが収集、蓄積された。

ISSの「きぼう」日本実験棟でハーブの栽培実験をする野口聡一宇宙飛行士=2021年3月[JAXA/NASA提供]【時事通信社】

ISSの「きぼう」日本実験棟でハーブの栽培実験をする野口聡一宇宙飛行士=2021年3月[JAXA/NASA提供]【時事通信社】

 90年代に入ると、スペースシャトルやISSに、植物栽培装置「アストロカルチャー(Astroculture)」「アドバンスドアストロカルチャー(Advanced Astroculture)」が搭載され、宇宙空間での栽培実験が始まった。2014年には、ISSに栽培装置「ベジー(Veggie)」が搭載された。ベジーはLEDで光を照射し、空気を攪拌(かくはん)するファンを備える装置で、給水システムはクルーが操作する。ベジーで栽培された作物は、翌15年に初めて宇宙飛行士が食べた。

 米国と並んで宇宙開発をリードしてきた旧ソ連・ロシアも、1950年代から地上の閉鎖環境での植物栽培研究を行っていた。71年には宇宙ステーション「サリュート1号(Salyut 1)」で、宇宙での植物栽培の実験を行った。その後、栽培装置は改良され、続く宇宙ステーション「ミール(Mir)」には、植物栽培装置「SVET」が搭載された。現在は、ISSのロシアモジュール内に植物栽培装置「ラダ(Lada)」を設置、コムギ、オオムギ、ダイズなどの栽培を行っている。

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