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Sunday, May 2, 2021

農地所有と利用 市場原理では語れぬ 新潟食料農業大学教授 武本俊彦 - 日本農業新聞

武本俊彦氏

 企業の農地所有については、農地所有適格法人の議決権緩和が議論される一方で、国家戦略特区で認められているものを全国展開する議論がなされている。すなわち、規制緩和によって意欲と能力のある主体が参入できれば、農業の活性化が図られ若者にとっても夢のある産業になるからとのことだが、本音は「グローバル企業が世界で一番事業がしやすい国」に日本をつくり変えることにあるのだろう。

 人口増加と需要増大の下では規制緩和による供給増加が経済成長を促進するという新自由主義的な考え方が成り立つとしても、人口減少と超少子高齢化、そして物価下落局面にある日本で採用することは、そもそも間違いだ。
 

地域条件に依存


 土地は元来、価格が上昇したからといって増産できるものではなく、その利用の在り方によっては周辺の居住者へ影響を及ぼす外部性があり、農地を使って生産する農業は自然条件など地域の環境に強く規定される。

 こうした場合は、単純な市場メカニズムだけに依存するのでは合理的な利用を実現することができない。農地制度など政府の関与が正当化されている理由だ。

 しかし、企業の農地所有に対する制度の在り方は、2009年農地法改正により農地の利用優先の観点から企業参入の自由を認めているため、農地法だけを根拠とすることは適当ではない。

 また、その制度の目的は、農業者が外部の企業による支配を防ぐためではなく、地域条件に強く依存する農業が地域の条件に習熟してなされることを前提とするとともに土地利用の在り方いかんによっては周辺に居住する人々への悪影響を防止するためからだ。

 つまり、農地所有者が誰であれ、所有者の論理だけで土地利用の在り方を決定することは、地域の土地・空間・景観に与える影響=地域住民の利害にも関わる問題なのだ。欧米の都市計画は、その決定に当たり、土地所有者だけでなく、地域住民の参加した場における議論を通じて中身を詰めていることも参考になる。
 

投機横行の恐れ


 こうした観点から農地の参入規制の在り方を議論する場合には、農地以外の土地も含めた土地全体の利用の在り方を議論することが前提となる。農地の所有・利用の規制だけの緩和を行えば、農地に対する投機的需要を発生させ、望ましい利用を損なう恐れがあるからだ。

 つまり、農地制度の規制緩和という切り口で行われている企業の農地所有の議論は、間違っているということだ。

 たけもと・としひこ 1952年生まれ。東京大学法学部卒、76年に農水省入省。ウルグアイラウンド農業交渉やBSE問題などに関わった。農林水産政策研究所長などを歴任し、食と農の政策アナリストとして活動。2018年4月から現職。
 

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