
策定の背景には、脱炭素社会へのかじ取りは国際社会の一員としての責務であり、9月の食料サミットを前に国として方針を示さなければいけない事情があります。自動車産業では既にガソリンから電気へのシフトが必至という中、農業分野も二酸化炭素(CO2)の削減は避けて通れません。それほど地球環境の危機(生物多様性、気候変動、土壌劣化など)は深刻な状況です。
戦略の細かい内容を巡っては賛否あるようですが、この先、アフターコロナを迎えた時、私たちは以前の暮らしに戻りさえすれば安泰でしょうか。これから循環型社会への、ダイナミックで包摂的なシフトチェンジは避けられません。
そもそも前提として、土壌や大気を汚染するシステムから生み出される食料と、良くする食料、どちらか自由に選べるとしたら、人はどちらを選ぶでしょう。それによって農産物の価格が上がるならば、その解決策は、①いっそ徹底したブランド化か②新機軸でコストを抑える──のいずれかでしょう。
まず、①の例として、山梨県では、土壌の表層部にある炭素の4パーミル(0.4%)相当分を毎年土壌に還元すればCO2の増加を実質ゼロに抑えられる、という国際指針に基づく「4パーミル・イニシアチブ」に取り組んでいます。
果樹の剪定(せんてい)枝を炭にして土に戻し、炭素をためて地力も上げる農法でブランド化し、輸出をリードしようとしています。環境先進圏の欧州連合(EU)向けにワイン市場の獲得を狙う、まさに生き残り「戦略」です。
続いて②の新機軸についてみどり戦略では、生産現場の革新と同時に、見た目を重視しがちな消費者についても言及しています。問題は、生産と消費の間にある「壁」です。
そこで筆者が掲げるのは、「1億農ライフ」です。国民理解だけでは、いつまでたっても、生産はひとごとです。移動制限に伴い、家庭菜園や都市農業の需要が高まったことはチャンスです。育てる喜びを知れば、野菜を見る目も変わり、農への理解も深まります。
農家でなくても、収穫をしたり、草刈りに産地へ通ったりする人が増えれば、規格外品は減り、ロスも減り、コストカットできるばかりか、将来の労働力となる関心層を増やせます。最も必要なのは、食料確保を「自分ごと」にする、ライフスタイルの変容ではないでしょうか。
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May 18, 2021 at 05:05AM
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「1億農ライフ」で協働 生産と消費の壁払う 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏 - 日本農業新聞
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