【ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米大統領は12日開かれた日米とオーストラリア、インドによる史上初の4カ国オンライン首脳会合で、いわゆる「クアッド」の枠組みを基軸に中国の脅威をにらんだ「自由で開かれたインド太平洋戦略」を主導していく立場を明確に打ち出した。米政権はインド太平洋での中国とのせめぎ合いを「民主体制と専制体制との競争」と位置づけ、4カ国の連携を緊密化させていく考えだ。
会合を主宰したバイデン氏は「米国はインド太平洋地域で国際法による統治と、普遍的価値の擁護、強制からの解放が確保されるよう取り組みを新たにしていく」と述べ、東シナ海や南シナ海での覇権的な行動を念頭に、一方的な現状変更を図る中国に対抗していく考えを鮮明にした。
地政学的にみれば、国家の存立を海洋に依拠するシーパワー(海洋勢力)である4カ国が、海洋進出を図るランドパワー(大陸勢力)の中国による航行の自由の侵害や、ルールに基づく国際秩序の破壊を容認しない立場で結集したものであり、インド太平洋での対中巻き返しの大きな転機となる可能性を秘める。
サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はホワイトハウスでの記者会見で、会合では中国が突きつける挑戦に関して話し合われたとし、「各国首脳は中国に対して何ら幻想を抱いていないことを明確にした」と強調した。
クアッドの枠組みは2004年のインド洋大津波の災害支援に対応する中で生まれ、トランプ前政権下でその戦略的価値の大きさが着目された。
バイデン政権はクアッドについて「軍事同盟ではない」とし、アジア版の北大西洋条約機構(NATO)に発展させる考えを否定する一方、中国に対する多角的な戦略連携の「死活的な舞台」(バイデン氏)と位置付ける。
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