首都圏の1都3県への新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言の延長は、2週間程度と見込まれる。菅義偉首相は4日の参院予算委員会で、「病床の逼迫」などを延長の理由に挙げた。感染症の専門家は延長を歓迎しつつも「延長しただけでは無意味」と口をそろえる。2週間で、どんな対策を取るかが重要となる。(沢田千秋、藤川大樹、井上靖史)
◆首相、専門家の分析待たず
「国民の命と暮らしを守るため2週間程度の延長が必要ではないか」。首相がそう言及した3日夕、厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」は会合を開いていた。首相はその分析報告を待たず、宣言延長を表明した。
会合後、メンバーの1人は「関西の知事は宣言解除を望んだが、首都圏の知事は解除は『まだ』と言っている。そんな状況で解除し感染者増に転じたら、政府の責任。政府は解除したいけれど、そんなバカなことしない」と明かした。
政治的な思惑は別としてメンバーたちは延長に好意的だ。ただし、東京都北区保健所の前田秀雄所長は「ただ2週間延ばしても、第4波を2週間遅らせるだけ。強い対策をしないと効果はない」と強調する。
◆懸念は変異株
懸念材料は、英国などに由来する「変異株」流行の兆し。従来株より感染力が強く、国内での報告は4日時点で234人だ。
座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は「第1、第2、第3波の流行時に主流となる株の置き換わりが起きた」と説明。メンバーの1人は「(英国などの変異株への)置き換わりは既に始まっている」とみて、第4波の到来を警戒する。
3日の議論の半分以上は変異株に割かれた。出席者によると、変異株の感染者1人が周りに感染させる人数を示す実効再生産数が1.2~1.3という分析結果が示されたという。
現在、首都圏の実効再生産数は0.9ほど。あるメンバーは「従来株は今の対策で減っていくが、この分析が正しければ変異株は抑えられない」と危機感を抱く。
◆積極的疫学調査の強化
宣言再延長後、解除の目安となる3月下旬は、歓送迎会や花見の時期。解除で人出が増え、「(感染)リバウンドを誘発する懸念」(脇田氏)がぬぐえない。2週間で、感染を抑え込む策はあるのか。
メンバーが挙げるのは、積極的疫学調査の強化だ。感染経路と濃厚接触者の特定を徹底するなどし、現状で把握できていない「見えにくいクラスター」をつぶす。ほかは、午後8時までの時短営業をしていない飲食店への協力要請。いわゆる「昼飲み」増加に対し、酒類提供の制限要請も検討対象になるという。
変異株対策としては、感染者の5~10%に変異株の検査を行う。変異株と疑われたら、感染研でゲノム(全遺伝情報)解析を行い、感染拡大防止に努める。
専門家組織は「絶対に第4波をつくらない」という認識で一致する。宣言解除後も見据え、「サーキットブレーカー」の導入も検討されている。新規感染者数や病床使用率などの指標が一定水準を上回ったら、政治判断を待たずに3度目の宣言を出す仕組みだ。
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