東日本大震災で震度6強を体験した獣医師さんが、その頃の思いを漫画に描き、Twitterで公開しています。作者は獣医師のセントラルド熊(@4RewJJOmWiLzR7L)さん。
2011年3月、獣医師さんが暮らす町は、数千軒の家が崩れ道が割れていました。止まらない余震や原発の不安がある中で他の町に移動する人もいて、他県へと続く道沿いや避難区域には、多くの動物たちが残されました。
避難区域では、後日助け出された動物もいましたが、中には死を迎えてしまった動物も。家族に会いたくて玄関扉に爪を立てていた子もいたそうです。
避難区域周辺の動物病院は無人の町から救助された犬たちでいっぱいに。番犬や猟犬として頑張ってきた子たちは、なかなかスタッフさんに慣れなかったそうです。
でも、こうして助け出された動物達は幸運でした。家畜の移動は認められず、畜舎の中で命を落とした動物や、生き延びたにもかかわず殺処分となった動物たちがいました。
原発周辺には人と暮らしてきた動物の死が無数にありましたが、まだ若かった獣医師さんには人の死の方が大きく映っており、伴侶動物は“ぜいたく品”という気持ちがあったそうです。
その考えが覆されたのは避難所に薬とフードを持っていた時。車の中や避難所の軒下で暮らす動物と、動物に寄り添う人の姿を見て、「動物はぜいたく品じゃない」「せめて動物くらいそばに残っていてもいいじゃないか」と思ったそうです。
「もっとつらい人がいる」という思いがいつの間にか檻を作っていて、いろいろなことが分からなくなっていたという獣医師さん。生き残ることも大事なものが残っていることも罪ではない、動物という“明るさ”は災害のど真ん中だからこそ大切だと考えます。
災害があったら最優先にするのは人間が助かることです。幼い子を抱えたり、避難が困難な人の手を引いたら、他に何かをつかむ余裕はありません。災害時に動物と共に生き延びるのは本当に難しく、行政の対応も十分とはいえません。
自分に命の危機が迫った時、最も優先すべきものを見失わずにいることは難しいです。動物と暮らす人の中には避難を諦める人もいるようですが、獣医師さんは「動物のために避難しないという選択は絶対に駄目、伴侶動物は人を死に追いやるためにいるのではない」と書いています。
迷って足を止める位なら、できる備えを全力でして、「可能ならば連れていく」の「可能」を限界まで広げ、同行するかしないかを判断してほしい。もし置いていく時には二度と会えなくなる覚悟をしてほしいといいます。
その決断が難しいのであれば、自分自身の命を救うためにも動物の避難準備を整えてほしい、「一緒に逃げろといわれても行き場がない」と声をあげてほしいといいます。
災害が起こった時、一番に切り捨てられがちなのは家畜です。自治体や自衛隊の給水車は人間で手いっぱいなので、地域の同業者などで連携して対策を講じることが大切だといいます。
私たちにできることは、伝えることと学ぶこと。日常がひっくり返る日が来たら自分と大事な人の身を守って、余裕があったら動物を助けてほしい。その命は生き残った日々を生きていく力になるから、と書いています。
リツイートした人たちからは「泣きながら読みました」「真剣に考えます」「当事者になっても諦めないで共に助かる方法を考えたいです。一番にペットを守ってあげられるのは共に暮らす私達だから」といったコメントが寄せられています。
セントラルド熊さんは「これを見た方の多くが『連れて行けないなら一緒に死ぬ』というご意見なのがちょっとつらいです。逃げなかったあなたを命がけで助けに行く人達がいること、その人達のためにも諦める前に死ぬ気で備えてほしい」と話してくれました。
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