住友商事の社内起業制度で20代社員の発案による農業関連物流マッチングサービス「CLOW(クロウ)」が実用化に向けて検証を進めている。人工知能(AI)を活用して農作物の量や種類、生産者情報と物流情報をクラウドに集約しつつ、農家・農業法人と物流会社をマッチングし、最適な輸送ルートを提案する。同制度の選抜通過者の中で、最年少かつ管理職ではないメンバーのみで構成するプロジェクト。農業と物流をAIでつなぎ、新事業の創出を目指す。(浅海宏規)
住商の「ゼロワンチャレンジ」は2018年度に開始した社内起業制度で、個人が考える新たな事業アイデアの実現を会社として支援する。CLOWは19年度に約150組のエントリーから最終選考を通過した4組の中で最年少社員が手がけるアイデアだ。
バイオマス原燃料部の仲村将太朗主任、物流施設事業部の榎本太一主任はともに15年の入社組。17年夏から19年夏まで、仲村主任がブラジルに駐在してサトウキビ原料のバイオマス燃料事業を担当。現地のサトウキビ畑は約90万ヘクタールで「自動運転やドローンなどの技術が活用された物流システムが印象的だった」(仲村主任)という。
ただ、ブラジルと同規模のシステムとなると、国内農業には規模的に合わないので「集荷作業における物流の効率化を日本で応用できないかと考えた」(同)と振り返る。
日本では農家ごとに出荷する量や時間、目的地が異なることが多く、トラックを手配して共同で農作物を輸送することが難しいという問題があった。
今秋には東三温室園芸農業協同組合(愛知県豊川市)、丹後王国ブルワリー(京都府京丹後市)の協力を得て、過去の農作物出荷データをもとにCLOWが設定した集荷・配送ルートの効率性をそれぞれ検証した。
「物流現場では手作業での配車が中心で、データ活用が十分に行われていない。AIを活用してビッグデータを分析しながら、農業物流を切り口に手つかずの情報を収集していく」(同)と方向性を語る。
都市近郊に的を絞り、少量多品種の農作物を広範なエリアに出荷したい農家と物流会社のマッチングや、地方における物流会社の人材確保、出荷者の作業効率化といったことをテーマに需要を取り込みたい考え。21年3月まで事業化の検討を行い、その後社内のいずれかの部署で実用化に向けた開発を進める方針。
日刊工業新聞2020年12月29日
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