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Tuesday, July 21, 2020

[農と食のこれから 人手不足の産地 5]<30代、農家に婿入り 群馬県嬬恋村> 未来実感「若返り」 - 日本農業新聞

 7月7日午前9時すぎ、群馬県嬬恋村の4代目キャベツ農家、松本裕也さん(34)が初日の収穫を終える判断をした。当初は正午ごろまで続ける計画だったが、断続的に降った雨で畑は深くぬかるみ、作業は限界だった。それでも中玉2000個分を入れた計250箱を5回に分けて近くの選果場へ届けた。

 両親ら5人で自宅の向かいにある資機材倉庫に戻ると、いつものように1歳になったばかりの長男奏音(かなで)君と妻知子さん(42)が出迎えた。裕也さんがパパの表情に戻った。裕也さんは「入り婿」だ。

 村内のスキー場で出会い、恋に落ちたのが知子さんだった。数年の交際を経て裕也さんがプロポーズし、7年前に結婚した時、知子さんは裕也さんの旧姓に「嫁入り」した。

 会社員だった2人は、裕也さんの実家に近い長野県小諸市で暮らしながら、キャベツ収穫の季節になると休日を利用して嬬恋村へ手伝いに来ていた。

 結婚して3年が過ぎ、裕也さんが30歳、知子さんの父秀信さんが70歳の時だった。秀信さんが収穫の手伝いに来ていた裕也さんに、「農家、やらないか」と切り出した。いずれは代替わりし、松本家を継いでもらう前提だった。

 知子さんは2人姉妹で、姉は嫁いでいた。秀信さんは同年代と比べ、まだまだ健康で元気だとはいえ、若者でもつらい仕事をいつまでも続けることはできない。内心覚悟を決めていた裕也さんは「やります」と答え、松本姓になった。

 この年、秀信さんが婿入りを持ち掛けたのは深い訳があった。
 

相場安定 活気生み出す


 戦後に村ぐるみで夏秋キャベツへの転作を図った嬬恋村の農家は、全国へ出荷先を広げた半面、3年に1度は「市場隔離」が必ず起きる歴史が続いた。価格の暴落で出荷できずに畑でつぶすつらさは、農家でなければわからない。後継者がいない問題は、「この苦しみまでわが子に継がせたくない」という親世代の思いから起きているケースは少なくなかった。
 

休憩のひととき。深緑の畑に談笑の花が咲いた(群馬県嬬恋村で=釜江紗英写す)

 ところが、JA嬬恋村によると、大豊作を背景に価格が暴落した2012年を最後に、市場隔離とは無縁の「恵まれた相場」が続く。義父の松本秀信さんが裕也さんに婿入りを打診した16年当時、村内の農家は“隔離の循環”から抜け出し、明るさに満ちていた。秀信さんも「きちんと暮らしていける」と判断できたのだ。

 同村ではこの数年、農家の代替わりが一気に進んでいる。農水省の調べによると、同村の基幹的農業従事者の平均年齢は全国平均より10歳も若い57・5歳。裕也さんの周囲にも、同じ世代の「婿入り」農家が少なくとも7人いる。この10年間で50戸が高齢を理由に離農した半面、若手が畑を引き継いで耕作面積は微増した。

 「農業で暮らしていける」と農家が実感できるだけで、世代交代が進み、農村は活気を取り戻してゆく。農村に活気が戻れば、食の安定供給は守られる。嬬恋にはそうした見本があった。

 村の若手農家の間には今、キャベツ一辺倒の農業を見直し、多品目栽培に取り組む動きがある。真夏日はまれだった同村も近年は30度を超える日が珍しくなくなり、夕方には畑に散水する農家も増えた。外国人技能実習生221人が来日できなかった危機を体験したことで、地球規模の気候変動に伴う気温上昇などあらゆるリスクに備えようという試みにつながっているという。

 倉庫での後片付けを終えた裕也さんが、奏音君を抱いた知子さんと自宅に戻った。雨上がりの空には巨大な虹のアーチが高原を包み込んでいた。(栗田慎一)(第1部おわり)

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