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Wednesday, July 15, 2020

[農と食のこれから 人手不足の産地](2) 「相身互い」人材融通 近づいた観光と農業 - 日本農業新聞

 群馬県嬬恋村の高級リゾート「ホテル軽井沢1130」管理部長の伊藤順哉さん(46)は3月、「どうやって雇用を守るか」悩んでいた。新型コロナウイルスの影響で国内外からの夏までの予約はほぼ全てがキャンセルされ、ホテルの休業も視野に従業員の勤務日を減らしていた。

 村内にあるホテルや旅館などが加盟する嬬恋村観光協会の岡村径朗会長の紹介で、嬬恋キャベツ振興事業協同組合から村内の農家が入国できなかった外国人技能実習生221人に代わる「10月までの働き手」を求めていると相談されたのは、そんなタイミングだった。

 軽井沢に近い浅間高原にある同村は、夏になると全国から避暑客が押し寄せる。本来は猫の手も借りたいほど忙しい季節だから、農家には手を差し伸べられない。

 だが、今年は違った。「苦しい時は相身互い。農家を助けたい」。伊藤さんはそう思った。

 繁忙期の夏に稼ぐ同ホテルは、閑散期の冬に従業員が他の仕事に従事できるよう副業を認めていた。ただし期間限定とはいえ、不用意に農家の仕事をあっせんすれば、従業員は不安を抱く。「地元の農家を手伝う仕事」だと伝え、本人の意思に委ねた。

 4月下旬までに、従業員88人のうち新入社員2人を含む21人が手を挙げ、高齢を除く16人に絞られた。そして、従業員にとって最大の懸案だった社会保険をホテル側が、毎月の給料を農家側が負担することで合意し、緊急事態下の「円滑な人材移動」が実現した。

 農家で働き始めて3カ月近くが過ぎた同ホテル従業員、望月由香利さん(54)は7月7日、今季最初の収穫を始めた農家の松本裕也さん(34)の畑でキャベツを刈りながら「やってよかった」と笑顔で言った。

 静岡市で夫と運送業をしながら、子ども6人を育て上げた。末っ子が大学に進学した昨年春、夫婦で嬬恋村に移住し、ホテルに職を得た。そして1年後、伊藤さんの呼び掛けに真っ先に手を挙げたのが望月さんだった。
 

ホテルで役立つ経験に


 ホテル従業員のまま農家で働く望月さんは、かつて家族旅行で群馬県嬬恋村を訪れた時、丘陵にキャベツ畑が広がる景色に感動し、「いつかここに住みたい」と嬬恋に恋をした。

 夫婦は農業と無縁だったが、家庭菜園は作っていた。4番目の息子(22)は子どもの頃から野菜の世話が好きで、当時住んでいた静岡市の農業高校から農業大学へ進学し、卒業した今春、「営農を学びたい」とJAしみずに就職した。望月さんは今、憧れたキャベツ畑で汗を流しながら、息子が農業にほれた理由を考えている。
 

夜明け前の収穫作業は手元を照らすヘッドライトが必須アイテムだ(群馬県嬬恋村で=釜江紗英写す)

 
 望月さんが現在、働いている畑の近くには、昨年10月の台風19号の水害でえぐられ、修復の見通しが立っていない耕作地もある。

 以前、野菜を買う時、安ければ安いほどうれしかったけれど、農業の大変さを知った今は、高く売れればいいなと思う。ホテルに戻った時、客に嬬恋キャベツについて体験を交えて説明するのが待ち遠しい。

 嬬恋村は農業と観光を地域振興の二本柱に据える。だが、双方の関係は近くて遠かった。

 例えば、見渡す限りのキャベツ畑は、世界的にも極めて珍しく、望月さんのように訪れた人々を魅了する。だから、観光業界はグリーンツーリズムや収穫体験を目玉にしたがった。一方、多くの農家は1年で最も忙しい時期に観光客を受け入れる余裕はなかった。

 「互いに歩み寄ることはできないのか」。伊藤さんは農家を助けたいと考えた時、自問した。

 同ホテルは現在、嬬恋キャベツを使った「地産地消レシピ」を作ったり、従業員研修として農家を手伝う仕組みを考えたりしている。一方、農家の間にもキャベツの生育状況をライブ配信するなど観光客誘致につなげようという構想がある。

 コロナ禍で職を失うなどした人が農家で働こうとした時、ネックとなったのが家族経営で社会保険がないことだった。非常事態下に嬬恋で実現した観光から農業への人材融通は、非常時の人手不足解消に必要な仕組みも明らかにした。(栗田慎一)
 

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July 16, 2020 at 05:13AM
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