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Sunday, March 8, 2020

仙台で農業再興、跡地に希望を 東日本大震災9年 - 中日新聞

仙台の伝統野菜「曲がりねぎ」を収穫する平松希望さん=仙台市若林区で

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 東日本大震災で大きな津波被害を受けた仙台市若林区の荒浜地区で、住民が集団移転した跡地の活用方法が固まってきた。このうち震災遺構の荒浜小学校に隣接する一角では、富山県出身で同区の農家平松希望(のぞみ)さん(27)が野菜を露地栽培する畑として利用することになった。一帯は多くの命が失われた土地。「震災前の地域を知らない私がやっていいのか」と迷いながらも、「この土地から新しい農業をつくり、復興させたい」と決意した。

 荒浜小から約一キロ離れた若林区荒井のビニールハウス。つなぎ姿の平松さんが、慣れた手つきで数本のネギを一気に引っこ抜いた。弓形に反った仙台の伝統野菜「曲がりねぎ」だ。三年前から、この地域で農業を続けるが、「まだ経験値不足で、胸を張って地域の生産者とは言えない」と話す。

 平松さんは、富山県滑川市出身。震災二日前に東北大農学部に合格し、当日は入学手続きで母親と仙台市内にいた。停電で真っ暗なホテルに宿泊した翌日、新聞で荒浜地区が津波にのまれる写真を見た。入学後は大学の復興支援サークル「リルーツ」のメンバーとして、農地のがれきを拾い、沿岸部の農作物を市街地で販売する店舗も運営した。

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 当初は研究職志望だった。「非農家出身の二十代で、よそ者の女が、農家になるのはハードルが高すぎる」とも思った。だが、震災後の集団移転で深刻な担い手不足に直面する沿岸部の農業を目にして「外から人が入り、基幹産業を復興したい」と考えが変わった。卒業後に地元農家で研修を受け、三年前に独立。今は若林区の荒井、荒浜両地区の個人から借りた〇・六ヘクタールで、ネギのほかブロッコリーや枝豆などを生産する。

 荒浜の集団移転跡地で農業を始めるのは、農業を通じた地域づくりへの思いからだ。昨秋、市が跡地の利用事業者を募集したが、「地元の人のいろんな思いがある土地で、私がやっていいのか」と悩み、三次募集まで応募に踏み切れなかった。だが、荒浜小を卒業した三十代の知人男性から「地域の農業を考えてくれる平松さんだからこそ、やれることがある」と背中を押され、覚悟を決めた。

 平松さんは荒浜小の東西に隣接する二カ所の計〇・九ヘクタールを借りる。一年目にマリーゴールドを植えて土壌を改良し、どの野菜に向いているかを見極めた上で、栽培品種を決める計画。農産物の生産だけでなく、小学校や福祉施設などと連携し、食農教育や就農支援にも取り組みたいという。

 今は枯れ草が伸びる更地だが、平松さんは「津波で大きな被害を受けたこの地から、日本の農業が続いていく形をつくっていきたい」と、希望を抱いている。

 仙台市の集団移転跡地 今後住民が住むには危険とされる市沿岸部の災害危険区域内で、住民が集団移転した跡地を市が買い取り、民間の事業者に貸し出す。荒浜地区では平松さんの農園のほか、市民農園や観光果樹園、スポーツレクリエーション施設などの活用が予定されている。

 (豊田直也、西田直晃)

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