農林水産省は12月6日、第4回2025年農林業センサス研究会を開き、農業集落調査の変更案を説明した。
農水省は、11月2日にこれまでの集落調査の代替案として、「農業経営体調査」(全国の農林業経営体を対象とする悉皆調査)に集落調査の主要な項目を追加することを示していた。
この日は委員からの意見をふまえて、変更案として調査項目は主要項目ではなく、2020年センサスの農業集落調査票の全項目を追加することを示した。
また、農林業経営体がいない約2万の集落については「農林業経営体調査客体候補名簿」によって、自給的農家、土地持ち非農家、その他の世帯(耕地面積の所有が5a未満)がいる集落を調査対象とすることも示した。これによって14万集落のうち、98%をカバーすることができるという。
また、農業経営体が2経営体の集落では自給的農家などから1客体を追加1経営体の場合は2客体、農業経営体がゼロの場合は3客体を追加して選ぶ方針も示した。選ぶ基準は経営耕地面積の大きい順に自給的農家を選び、自給的農家もいない場合は経営耕地面積の大きい土地非農家から追加する。
こうした変更案について委員からは「見過ごせない問題がある」との指摘が出た。
集落調査は集落の寄り合いの回数や議題、地域資源の保全活動などを調査するもの。
東京大学農学生命科学研究科の竹田麻里特任研究員は、自給的農家を適切に把握できるかどうかの加えて「地域としての取り組みを(調査対象者)全員が正しく把握しているか分からない」と指摘、無記入が増えたり、個人の認識を聞くことになり、統計としての科学的根拠に懸念を示した。また、複数の住人に聞くことによって寄り合いの回数など、回答にばらつきが出た場合は「数値に代表性が乏しく統計の自己否定になる」として「反対せざるをえない」と指摘した。
橋口卓也明治大学農学部教授は、集落の活動などについて自治会長など「周囲から情報を得て責任を持って回答できる適格な人に聞くべき」として「とても是認できるものではない」と批判した。
一方、農水省は2020年調査で自治会長など集落の精通者の情報が個人情報保護の問題から得られなかったことや、精通者が見つかってもこの集落調査に答えられなかった実態もあったと話した。
そのうえで「代わり得る方法としては(農業)経営体に聞くこと。しかし、選ぶといっても選びようがない」と回答し、「厳密ではないということは受け止めて、実質的に継続する集落調査として(この代替案で)次回のセンサスに臨みたい」との意向を示した。
また、群馬県総務部の池田絹子統計課長は集落調査項目を全員に聞く必要があるのか疑問を示すとともに、集落調査項目を追加することで調査を行う自治体や回答者の負担が増えることを問題視した。
研究会は予定時間を1時間近くオーバーし、委員からは変更案に同意する意見は出なかった。農水省は来年2月中旬に最終の研究会を開き、調査方法などを示すことにしている。
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