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Tuesday, October 18, 2022

<5>攻めの農業 海外へ販路 - 読売新聞オンライン

 徳島ブランドの魅力を海外にアピールする、好機が訪れている。県特産の農作物が海外市場を拡大。「にし阿波」地域の傾斜地農耕が世界農業遺産に認定された。少子高齢化が進む国内から海外へ視野を広げ「攻めの農業」に転換しようとしている。

 県によると、2021年度の農作物の輸出額は3億1900万円。16年度は9980万円で、5年で3倍にアップした。品目別の最多は、サツマイモの品種「なると金時」の2億3400万円だった。なると金時の21年度の輸出量は518・6トン、ユズは3・6トンで、7年前から6倍と12倍に伸びた。

 県は12年度、輸出拡大の重点品目、国や地域を定めた「とくしま農林水産物等海外輸出戦略」を策定。なると金時については、シンガポールや香港、台湾のスーパーや百貨店に特産品コーナーを設け、試食会を開催。現地では「(なると金時の)皮が赤くて美しい。ほど良い甘さで食べやすい」と好評だったという。

 なると金時の輸出の3割を担う生産者の集まり「農家ソムリエーず」(徳島市)は、香港からの移住者が多いというカナダへの進出を目指す。県と共同で、海外輸送中の品質劣化を防ぐ「キュアリング技術」を改良し、長時間輸送が可能になったためだ。藤原俊茂代表取締役は「アジアではサツマイモの市場が確立されている。どうカナダで評価されるのか。可能性を探りたい」と語る。

 ユズやスダチも、県がフランスで試食会を開催し、現地のシェフに調理で試してもらった。レモンやライムと異なる独特の香りが高く支持された。

 新型コロナウイルス感染拡大以降、県はインターネットで商品を購入できる「ECサイト」への出品を生産者らに呼びかけた。オンラインによる商談会を設けるなど、市場開拓を続ける。スダチの輸出量は18年度の1176キロからコロナ禍で21年度は497キロに減ったが、ユズは好調だ。県の担当者は「海外は日本食ブーム。需要が高まっている北欧にも拡大していきたい」という。

 8割が森林の「にし阿波」。美馬市や三好市、つるぎ町、東みよし町の山間部に、400年以上も伝えられた傾斜地農耕が18年3月、国連食糧農業機関から「世界農業遺産」に認定された。

 山の急斜面を段々畑に造成せず、そのまま畑にする。最大斜度は約40度。畑では土の流出を抑えるため、ススキなどイネ科の植物を乾燥させたカヤを畝に敷き込む。地元の人たちは狭い農地で雑穀や野菜を育て、自給自足の生活を続けてきた。

 農業遺産を次代に伝えるには、後継者を確保することが課題になる。三好市東祖谷の「祖谷雑穀生産組合」の杉平美和さん(64)は「最近は耕作放棄地が目立つ」と話す。

 杉平さんらは、雑穀の在来種・ヤツマタ(シコクビエ)やソバなどの栽培を盛んにするため、16年に組合を設立。耕作放棄地を組合が借り受けるなどして畑を広げ、収穫量を増やした。雑穀を活用した商品11種類を開発し、地域の宿泊施設などで販売している。

 今年はIターンの移住者2人が組合に加わった。担い手が生計を立てられるよう、傾斜地農耕や祖谷の味に触れる体験ツアーの実施なども模索する。今月11日にはコロナの水際対策が大幅に緩和された。最近は東祖谷にも外国人観光客の姿があった。杉平さんは「海外から注目されていると感じる。守ってきた傾斜地農耕で外国人を呼び込みたい」と期待している。(おわり。この連載は斎藤七月、山下陽太郎、北野浩暉、上田裕子が担当しました)

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