同法は1999年に制定。担い手の育成・確保など、現在の農政を方向付けてきた。一方、制定から20年以上がたち、農家・農地の減少や農産物輸出の進展、気候変動など情勢が変化。ウクライナ危機を背景とした食料や生産資材の供給不安の高まりも大きな契機となり、同法見直しを求める声が自民党などから強まっていた。
岸田首相は同日の本部で、「制定後約20年間で初めての法改正を見据え、関係閣僚連携の下、総合的な検証を行い、見直しを進めてほしい」と述べた。
これを受け農水省も同日、野村農相を本部長とする省内の同本部を新設した。野村農相は同法制定後の農政を予断なく検証するよう指示。「農業者だけ、消費者だけの問題ではない。国民各層から幅広く意見を聞いてほしい」とし、「およそ1年かけて方向性を提示」する考えも示した。
野村農相は同日の閣議後会見で、「これからの20年の日本の農業をどうするかという大きな岐路だ」と述べ、基本法の検証結果について「来年中には作り上げる」と強調した。自民党食料安全保障検討委員会の森山裕委員長は、基本法改正案について、2024年の通常国会への提出が望ましいとの考えを示している。
[解説]国民理解が不可欠
政府が食料・農業・農村基本法の見直しに踏み出す背景には、生産者の減少や輸入環境の変化などで食料安全保障が危ぶまれていることがある。政府には、情勢変化を丁寧に検証し、課題解決の道筋を示すことが求められる。国民的な理解も欠かせない。
同法制定後、農業が主な仕事の「基幹的農業従事者」が半減するなど、農業を取り巻く情勢は「想像を超えるレベル」(農水省関係者)で変わった。日本の食料自給率が低迷する一方、中国が食料輸入を急増させ、食料の海外依存には黄信号がともる。肥料や飼料などの輸入依存のリスクもウクライナ危機で表面化した。こうした食料安保上の課題への対応の明確化が急務だ。
基本法制定時から大きく進展した農畜産物輸出や、気候変動を背景に必要性が増す環境負荷低減の政策上の位置付けも課題になる。
足元で国内農業は生産資材の高騰に直面している。食料安保を確立するには、農産物価格への転嫁に対する消費者の理解・協力が欠かせない。野村農相が強調する「国民的コンセンサス」を得るためには、国民各層による幅広い論議が重要になる。(松本大輔)
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September 10, 2022 at 03:10AM
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食料・農業・農村基本法を見直しへ 食料安保強化 1年程度かけ方向性 - 日本農業新聞
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