選手たちが農業に従事しながら、国内トップリーグに参戦しているチームがある。日本ハンドボールリーグ(JHL)・男子リーグに所属するクラブチーム「ゴールデンウルヴス福岡」だ。「農業×アスリート」を理念とし、地域の農業の発展とハンドボールの普及を目的に誕生したチームは、2019-20年のシーズンからJHLに参入、トップアスリートの生活と農業との両立を模索する。地域の農業を担うスポーツチームを追う企画の第2回は、プロリーグ化に舵を切るJHLにあって、異色の存在である農業チームの挑戦を紹介する。
地域で有り難がられるスポーツ選手のパワー
博多から車で約40分という利便性を活かし、都市近郊型農業が盛んな福岡県糸島市。ゴールデンウルヴス福岡の農園は、見渡す限り田畑が広がる緑豊かな一角にある。遊休農地を借り受けた田畑は合わせて約3ヘクタール。ここで選手たちは米、ジャガイモ、キャベツ、ホウレンソウなど旬の野菜を中心に生産している。
選手たちが収穫した野菜はJA糸島産直市場や地元スーパーなどに直接持ち込み販売するほか、市内のボランティアが企画するこども食堂に食材として提供する。高齢化で田畑の担い手不足が進む糸島では、地域で協力して行う農業用水路の清掃や消防団活動なども人手が足りないため、若く体力のある選手たちの存在はとても有り難がられ頼りにされているという。
入団4年目、コーチ兼任で農園長を任されている國分晴貴選手(32)の座右の銘は「晴耕雨読」、好きな言葉は地産地消ならぬ「地産地勝」だ。日焼けした精悍な表情で「地元農家の方に教えてもらいながら、いろいろな野菜が作れるようになりました。おいしかったよと言われ、苦労して作った野菜がお金になる時はやはりうれしいですね」と話す。
ゴールデンウルヴス福岡は、バイオジェット燃料研究で国内トップを走るベンチャー企業「Biomaterial in Tokyo」(福岡県大野城市、通称bits)代表取締役を務める泉可也氏が2016年1月に立ち上げたクラブチームだ。スタート時は一般社団法人フレッサ福岡(フレッサはスペイン語でイチゴの意味)として糸島市でイチゴをメインに栽培しながらJHLの下部地域リーグに所属していた。現在はイチゴからは撤退。JHLへの参入を機に株式会社ゴールデンウルヴス福岡(山中基代表取締役社長兼監督)を立ち上げ、フレッサの運営を引き継いだ。
創設者の思いが「農業×アスリート」というかたちで結実
福岡県出身の泉氏は九州大学農学部を卒業後、王子製紙で再生可能エネルギーの開発に従事してきた。高校、大学、社会人でハンドボールをしていた縁で、チームを創設したが、あくまで「先に農業への思いがあった」と泉氏は力を込める。
泉氏が福岡に戻ったのは東日本大震災で研究所が被災したことがきっかけだ。もともと母と妻がそれぞれ実家の田んぼを引き継いでおり、農業は身近な存在だった。砂漠の緑化事業に取り組んだこともあり、脱炭素社会に向け「究極のカーボンネガティブ」である農業をいつかはしなければいけないと考えていた。
福岡に戻り、かねて興味のあった糸島のイチゴ栽培を調べるうち、田畑の担い手がいなくなり耕作放棄地が増加の一途をたどる地域の深刻な状況を知った。耕作放棄地は放棄されてからの年月が長ければ長いほど元の状態に戻すのに時間がかかる。「少しでも地域の衰退を止めるため、だれかが田畑を引き継がなければいけない」。そんな思いを出発点に、競技を続けたいハンドボール選手に活躍の機会を与えながら、選手が農作業を担うことで地域の活性化を目指す「農業×アスリート」のアイデアが生まれた。
2022年、外国人選手2人と大卒新人3人が加わったウルヴスでは、所属する16人の選手のうち8人が農業に従事する。糸島市から車で1時間以上かかる福津市にも借り受けた畑が1ヘクタールあり、農業チームの選手は交代でこちらの管理も行っている。bitsや地元企業で働く選手もいるが、こちらも「戦力」としてフルタイムで勤務する。そもそもJHL男子リーグに所属するチームで、選手が午後6時まで就業しながら競技するチームはウルヴスだけだという。
國分選手に聞くと、農業を担う選手は普段はシフトを組んで作業するが、繁忙期は総出になることも多いそうだ。例えば、5月上旬にピークとなるラッキョウの収穫。土中に埋まっているラッキョウの収穫は傷つけないよう一株ずつスコップで周りを掘り起こしながら引き抜かなければならず、全員で休みなく作業しても4、5時間で1列10メートル程度の範囲を収穫するのが精いっぱい。想像以上に手間暇かかる重労働なのだ。
「作物と作物の(収穫間隔が開く)端境期は比較的時間に余裕があり、雨でお休みになることもありますが、繁忙期は朝5時半から前日収穫したものを数カ所の出荷場へ運びます。畑に戻って7時、8時頃から収穫し、10時頃から袋詰めなどをして出荷。昼休み後は畑の手入れに回り、また夕方から収穫する、という生活になります」と國分選手。夏場は早朝や夕方に集中して作業し、日中休めるように配慮するとはいえ、不定期で夜8時から10時まで行う全体練習が始まる頃には、既に疲労困憊という時も少なくないそうだ。
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September 19, 2022 at 10:04PM
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野菜作りとハンドボールで目指す「地産地勝」 地域の農業を担うスポーツ選手たち(2) | 未来コトハジメ - Nikkei Business Publications
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