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Tuesday, August 23, 2022

基本法の検証 理念支える政策大胆に - 日本農業新聞

 食料・農業・農村基本法の検証が始まる。食料自給率は下がり続け、基本法が掲げた理念は達成できずにいる。なぜ達成できなかったのか、動員した政策は有効だったのか。そうした検証が必須だ。国民理解の下で実効を上げる政策はどうあるべきか、踏み込んだ議論を期待したい。

 食料・農業・農村基本法は1999年に施行された。「食料の安定供給」「多面的機能の発揮」「農業の持続的な発展」「農村の振興」の四つの理念を掲げ、この間の農政を方向付けてきた。

 施行から23年がたっても、四つの理念は色あせない。新型コロナ禍やウクライナ情勢で食料安全保障の強化が今、焦点となっている。だが「食料の安定供給」の規定では、世界の食料需給や貿易には不安定さがあると指摘。「国内の農業生産の増大を図ることを基本」とすると明記、基本計画で食料自給率目標を設定することも定めた。この基本法の下で、なぜ改善しなかったかを問うべきだ。

 一方「多面的機能の発揮」は、国土保全、水源かん養、環境保全、景観形成といった農業・農村の役割を挙げる。しかし、それらをどう実現するか基本法に言及がないのが問題だ。気候変動などを背景に、多面的機能の発揮は重要性を増している。政策の在り方にもっと踏み込むべきだ。

 スイスの憲法改正と農政改革を参考にしたい。1996年に、国民への食料供給と資源保全、景観維持という「農業」条項を憲法に追加。2017年には「食料安全保障」条項を追加した。「食料安全保障」条項では、生産基盤の保全、効率的な資源利用、持続可能な農業発展のための貿易などを明記。改正の国民投票では8割の賛成を得た。

 この憲法改正に前後し、スイスは14年に農政を改革し、食料安全保障や多面的機能を重視した直接支払いを導入した。農業者の所得支持から、国民に必要な農業の役割維持へ目的を広げて国民理解を取り付け、その上で生産力の保全へほぼ全ての農地を対象にした支払いを設けるなど、直接支払いを強化している。

 「食料安全保障」条項の追加改正は、生産基盤の維持をさらにてこ入れする必要に迫られたためだ。一方で、食品産業、消費といったフードチェーンに視野を広げ、国民的取り組みに発展させたい意図も見える。次期の農政方針で憲法改正を踏まえた政策の肉付けをするとみられる。

 改正しやすいスイスの憲法は、日本の“農政の憲法”とされる基本法に重ねて考えることもできる。スイスは、食料安全保障をはじめ、国民にとっての農業の役割を明確にし、実現に必要な政策を大胆に強化した。今後の基本法の検証で大いに参考にしたい。

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August 23, 2022 at 03:07AM
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