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Saturday, February 12, 2022

プラ被覆肥料 水田からの流出防止を - 日本農業新聞

 海へ流れ出るプラスチックを減らそうと、農業でも取り組みが始まった。JA全農などは「2030年にはプラスチックを使った被覆肥料に頼らない農業」を掲げた。陸と海はつながっている。被膜殻の水田からの流出を防ごう。

 プラスチック被覆肥料は「水稲用一発肥料」ともいわれ、春先に投入することで作物の生育ステージに応じて肥料成分が溶け出す。夏場の追肥を省けるだけに、産地で広く使われている。ただ、肥料が溶出した後の被膜殻が水田などから水路、河川を通して海に流出し、海洋汚染の一因になる恐れが出てきた。

 一般社団法人ピリカが、全国120の水域で行った20年度のマイクロプラスチックの流出実態調査によると、日本国内から年間推計157トンのマイクロプラスチックが海に流出していることが分かった。内訳を見ると、質量比で肥料の被膜殻は、人工芝(23%)に次いで15%を占めた。

 国会では「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立、21年6月に公布された。農業分野でも衆参両院の環境委員会による付帯決議が行われ、農業用の器具など使用済みプラスチック製品の環境への流出状況の把握、削減措置、代替製品の研究などが盛り込まれた。

 全農などは肥料の被膜殻の流出防止に向けて、浅水代かきや排水口でのネット設置、殻をすくい取るといった対策を呼び掛ける。

 農水省によると、代かき直後に被膜殻の捕集対策を施せば、圃場(ほじょう)外への流出を大幅に減らせる可能性もあるという。同省は21年度補正予算として、プラスチックを使わない肥料への切り替えや流出防止対策などの取り組みに対し、上限300万円の支援策を用意した。

 こうした問題にいち早く反応したのが宮城県農業高校だ。生徒は、業者と協力してプラスチックを使わず同様の効果が期待できる、尿素とホルムアルデヒドを組み合わせた「ウレアホルム」を開発した。担当する山根正博教諭は「プラスチックゼロの肥料で作った米は、従来の肥料、有機質肥料で作った米と比べて食味が良く、粒の大きさが1・5倍になった。農高から全国に環境を考えた米作りを発信したい」と展望する。

 滋賀県農業技術振興センターもプラスチックを使わない硫黄被覆肥料、ウレアホルムを含む肥料を用いて「コシヒカリ」の栽培試験を実施。従来の肥料と同等の収量と品質が得られたと発表した。県は19年に「滋賀プラスチックごみゼロ・食品ロス削減宣言」を出している。

 地球環境を守るために、産地で被覆肥料の殻の流出を防ぎ、プラスチックの削減、脱却へかじを切ろう。

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