新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、政府は27日、東京都に「大規模接種センター」を設置すると決めた。期間は5月24日から3カ月間で、当初は埼玉、千葉、東京、神奈川の1都3県の65歳以上の高齢者が対象。1日1万人の接種を想定する。自治体による接種とは別ルートを国が設けることで、菅義偉首相が表明した「高齢者接種の7月末の完了」につなげたい考えだが、「3密」を招く恐れなど課題は多い。(井上峻輔、市川千晴、大野暢子)
◆未承認のモデルナ製想定
東京の会場は、オフィス街にある国の大手町合同庁舎3号館(千代田区)。接種は自衛隊の医官や看護官が行う。同様の会場を大阪府にも設ける方針。首相が27日、岸信夫防衛相に設置を指示した。
1都3県には全国の高齢者の4分の1が暮らす。ワクチン接種を担当する河野太郎行政改革担当相は記者会見で「ここの(接種)スピードを上げることは非常に重要だ」と語った。
政府関係者によると、使用するワクチンは現在未承認の米モデルナ製に限ると想定。国内で唯一承認されている米ファイザー製ワクチンは3週間の間隔で2回接種するが、モデルナ製の接種間隔は4週間。保管温度も違う。承認後に自治体で複数のワクチンがあると混乱するため、別ルートで使うことを検討してきた。
◆高齢者には不便?
会場を巡っては、多くの課題がある。大人数が集まれば「3密」を生みやすい上、緊急事態宣言などの状況次第では、接種のために都内に入ることを控えないといけない。長距離の移動は負担になる高齢者もいる。岸氏は記者団に「コロナ患者の対応や地域医療もあり、医官、看護官の派遣には制限もある」と態勢の難しさも指摘した。
予約方法は政府が検討中だが、ネットでの予約は不慣れな高齢者も多い。電話は申し込みが殺到すれば、つながらない恐れもある。
◆政府の遅さに批判も
政府は接種スケジュールを各自治体に委ね、完了時期の見通しも示してこなかった。首相は23日の記者会見で「7月末に高齢者の2回接種を終えられるよう取り組む」と表明。それに続く形で大規模接種センターの設置を指示した。野党からは「唐突だ。焦っていることの裏返しだ」と批判の声が上がる。
東京都八王子市の担当者は「大手町で働くのは高齢者でなく現役世代。接種が無料なのに、わざわざ交通費を払って都心に行く人は少ないのでは」と話す。
NPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は「遅きに失した。これまで国は自治体に丸投げし、ちゃんと準備ができていなかった。こんな泥縄式では失敗する」と指摘する。
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