「公判に耐えうるレベルで立証するには非常に難しい事件だった」。28日、和歌山県警田辺署で記者会見した保田彰・県警捜査1課長は、逮捕まで約3年を要した理由をそう語った。
野崎幸助さん(当時77歳)は急性覚醒剤中毒で死亡したが、遺体に注射痕はなく、毛髪からも覚醒剤成分は検出されなかった。知人らへの聞き込みを重ねても野崎さんが覚醒剤を常用していたという話は出ておらず、県警は飲食物に混ぜるなどして故意に摂取させられた可能性を調べてきた。
野崎さんは事件当日、ビールを飲んでいたとみられ、県警は野崎さんが経営していた会社などからビール瓶約2500本を押収。しかし、覚醒剤が混入した痕跡は確認されなかったという。
県警は死亡推定時刻から逆算し、野崎さんが覚醒剤を飲まされたとみられる時間帯を特定。防犯カメラの映像では家の外から侵入した形跡がない一方、当時は家政婦の女性が外出しており、野崎さんと須藤早貴容疑者(25)が2人きりだった疑いがあることが分かった。
今後の捜査では覚醒剤の詳しい入手経路や摂取方法、動機の解明などが焦点になる。直接的な証拠が乏しい中、警察や検察は状況証拠の積み重ねによる難しい立証を強いられる可能性がある。【山口智】
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