福岡県篠栗(ささぐり)町で5歳男児を餓死させたとして母親と知人女性が逮捕された事件で、男児の死後、知人女性が母親に指示して母親の携帯電話を破壊させていたことが、捜査関係者への取材で判明した。県警は、警察の捜査が自身に及ぶのを警戒した知人女性が過酷な食事制限を指示した証拠の隠滅を図ろうとし、男児の死後も知人女性に心理的に支配され続けた母親がその指示に従ったとみている。
母親の碇(いかり)利恵容疑者(39)と知人の赤堀恵美子容疑者(48)は、2019年8月ごろから碇容疑者の三男の翔士郎(しょうじろう)ちゃんの食事の量や回数を減らし、20年4月18日に餓死させた疑いで今月2日、保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。
捜査関係者によると、両容疑者は16年4月ごろに子供たちが町内の同じ幼稚園に通う「ママ友」として知り合った。しかし、18年ごろから赤堀容疑者は碇容疑者に「ママ友の間で悪口を言われている」などとさまざまなトラブルをでっち上げるようになった。赤堀容疑者は、ある保護者を暴力団と関係している「ボス」という架空の存在に仕立て、トラブルを解決した「ボス」に渡す名目で碇容疑者に金の要求を繰り返した。
19年5月には、碇容疑者は元夫が浮気しているという赤堀容疑者のうそを信じ、離婚。翔士郎ちゃんと小学生の兄2人の4人暮らしとなった。その後も赤堀容疑者は金を要求し、総額約1200万円に上る金を渡し続けた一家の生活は困窮を極めた。だが、碇容疑者は「ボス」とのパイプ役である赤堀容疑者を疑わず、全面的に頼ったとみられる。
同8月ごろからは赤堀容疑者が過酷な食事制限を指示。碇容疑者と翔士郎ちゃんら3人の子供は周囲が心配するほど痩せ衰えたが「ボスが監視カメラで見張っている」という赤堀容疑者のうそを信じ従い続けたという。
20年4月18日、碇容疑者は衰弱した翔士郎ちゃんが息をしていないのに気付いた時も119番せずに赤堀容疑者に連絡した。翔士郎ちゃんの死後も元夫との裁判の手続きをしている「ボス」に渡す名目で赤堀容疑者に現金をだまし取られたとみられ、同6月以降に県警の事情聴取を受けるまで碇容疑者は「ボス」の存在を信じ込んでいたという。【浅野孝仁、中里顕】
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