JAの活動:ウィズコロナ 命と暮らしと地域を守る農業新時代への挑戦
JAグループのさまざまな事業と、技術やアイデアを持ったスタートアップ企業などをむすびつけ社会課題の解決をめざすアグベンチャーラボは全中、全農、農林中金などが運営している。このアグベンチャーラボの中核となっているのが「JAアクセラレータープログラム」。プログラムはインキュベーション(新規事業の創造)、ソリューションマッチング(事業連携)、実証実験の3つのステージで構成され、スタートアップ企業とJAグループが連携して事業化を促進する。参加応募は171件あり、8社が優秀賞を受賞しJAアクセラレータープログラムの正式な参加が決まった。そのなかから農家向けにスマホで農業日誌を記録できす農業アプリを開発したアグリハブ社の伊藤彰一CEOにJAグループとの連携でめざす農業の未来像について聞いた。
アグリハブ社の伊藤彰一CEO
―事業の概要をお聞かせください。
私は2010年からサラリーマンとして大企業向けや消費者向けのソフトウエアの開発を続けてきましたが、もともと農家でしたから就農の意向はあり、16年に東京都のJAマインズの神代地区で農業を始めました。今の時期はトウモロコシ、枝豆、ミニトマトを中心に栽培し、冬はブロッコリー、キャベツが中心です。
AGRIHUB(アグリハブ)というアプリを開発したのは、就農してすぐに個人農家に必要なアプリがないと感じたからです。個人農家は管理しなければならないことが多いにも関わらず、なかなかそれに適したものがないので自らアプリを開発しました。
農業関係のアプリは大規模農家の就労管理を目的にしてつくられたものが多く、それに対してアグリハブは個人農家の栽培管理に特化した機能を多くそろえ業界初の機能もリリースしています。たとえば、農薬の散布回数の管理は品目が多い個人農家では特に大変で、今までは手書きの農業日誌を使って、あとどのくらい農薬が使えるのかなどと管理していました。それをデジタル化し、スマホを数回クリックすれば管理ができるアプリをつくったということです。それから積算温度などの気象情報も栽培にはとても役立つ情報になりますので、その機能もつけました。
アグリハブによって農家は畑で農業日誌をつけることができるようになりました。今までは一度家に持ち帰ってパソコンで記録をするという作業が必要でしたが、アグリハブは、その都度その都度、文字を入力しないでクリックをするだけでデータの入力ができるようにつくっていますので、畑で数クリックするだけで農業日誌の登録や農薬散布の管理が簡単に行えるようになっています。
こうした機能について現在、ユーザーからは農業アプリ№1の評価を得ています。サービス開始から1年10か月ほどになりますが、アグリハブが提供する農業日誌の登録数は19万件で月間のユーザー数は4000人、会員登録数はすでに6000人を超え順調に増えています。
私たちはこの先、何をめざしているのかというと、アグリハブというスマートフォンアプリを日本全国に普及させることによって日本初の農業基幹システムをつくろうということです。
―IT化を進めるとどんな未来が見えてきますか。
AI(人工知能)があと何年かで一般に普及してくると考えていますが、AIを活用するにはデータが集まっていなければなりません。ですから早くアグリハブを全国に普及させて農業の基幹システムにし、農研機構など国の機関や、農機メーカーなどと連携してビッグデータとして集め、AIを適用できる環境を日本の農業につくっておきたいと考えています。そのビッグデータを活用して栽培支援AIを構築するということをめざしています。
栽培支援AIでは生産者への提案をしたいと考えています。たとえば、キャベツ栽培からトウモロコシに変えたいと考えたとしても、どの程度収益が見込めるかなどは今は分かりません。それをAIを使って、どういう方法で栽培し、どこに出荷することでどのぐらいの売り上げが見込めるのかといった提案をしたいと思っています。
そのためにまずは日本で30万ユーザーを獲得しシェア№1になり、他社との連携によってビッグデータを構築していきたいと考えています。
―JAアクセラレーターに応募された理由は。
やはり農業をやってみるとJAとのつながりが多くとても大切なものだなと感じています。一方、いまだに農薬の使用履歴はJAにファックスで送らなければならないなど不便を感じることもありました。そこで、そういう点で一緒にIT化を進めていきませんかという思いで応募したということです。
現在、大きく二つの連携を進めています。一つ目は、Z―GISとの連携を進めています。GAPの取得を進めようと考えているJAが多いと聞いていますが、GAP取得で必要なことのひとつは農薬使用をしっかり管理することです。これまではパソコンで入力するなどの方法でしたが、入力する項目が多く生産者の負担になっていたと思います。そこは文字入力を必要としないアグリハブが得意とする部分ですから、アグリハブで農薬使用を管理してその情報をZ―GISと連携することでGAPの取得を進めていこうと考えています。
二つ目は、これまでJAに対して組合員である生産者が手書きで提出している農薬記録を、スマートフォンアプリ「アグリハブ」に入力したデータを使って提出できるように連携を進めています。JAは生産者の農薬使用履歴の確認作業に多くの時間を使っています。この連携によってJAと生産者双方の管理業務の効率化を図ることができます。
―これからの農業をどう考えますか。
農家はもっとITを使うようにならなければだめだとよく言われますが、私はそれは無理難題だと思っています。疲れた体で夜な夜なデータ管理をするなどそもそもやりたくないことですし、それをやったところで農家に直結するメリットがあるわけではないと思っています。
それよりも畑での作業が個人農家にとってはいちばん大切なことですから、なるべくそれに集中していただきたいと思っています。たとえば農薬の在庫管理も農家は自分でやっていると思いますが、それもJAの購買情報とアグリハブが連携することによって自動的に在庫管理をするということもできるようになると思います。
農家は自分の畑でその日の作業をスマホに記録していく。それだけで事務作業は終わるという農家の未来をつくっていきたいと思っています。
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August 21, 2020 at 11:23AM
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【JAアクセラレーターがめざすもの】日本の農業基幹システムめざす アグリハブ 伊藤彰一CEO【特集:ウイズコロナ】 - 農業協同組合新聞
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