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Sunday, June 28, 2020

九州農業リポート 「コロナ後」の戦略必要だ | 社説 | コラム - 熊本日日新聞

 九州農政局は、管内の農業情勢をまとめた2020年版「見たい!知りたい!九州農業(九州農業リポート)」を公表した。

 人口減少で国内市場が縮小する一方で、世界の食料需要は増加が見込まれると指摘。農家の所得を向上させ、生産基盤を維持する手段として、農林水産物・食品の輸出拡大の重要性を説いている。

 ただ輸出は、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の減速で1月以降、落ち込んでいる。一部の国が自国の食料確保を優先するなど、世界規模で支え合ってきた安定供給にほころびも見られる。コロナ禍で生じた課題を加味した九州農業の新戦略を、改めて示す必要がある。

 リポートは、九州農業の現状を統計で示し、国の支援策や先進的な取り組み事例を紹介。「今年の話題」として、3月に閣議決定した新たな食料・農業・農村基本計画と、輸出拡大を推進する意義について詳しく述べている。

今年は状況が一変

 19年の九州の農林水産物・食品輸出額は前年比1・9%増の975億円と、3年連続で過去最高を更新した。ブリやサバなどの水産物がけん引し、牛肉などの畜産品も伸びた。

 しかし、今年に入って状況は一変している。新型コロナ感染拡大の震源地となった中国や、香港などへの輸出がストップ。1~4月の輸出額は、日本全体で前年同期比9・4%減まで落ち込んだ。九州も例外ではない。

 4月以降、中国や台湾、ベトナムへの輸出は戻ったが、世界的な感染拡大は続いている。当面は輸出を増やしにくい状況が続くとみるべきだ。今後は輸出拡大だけでなく、国内需要をどう開拓するかも課題となる。

国産への切り替え

 多くを輸入に頼る業務・加工向け農産物を、国産に切り替えるのも一案だろう。この間、外食産業からの発注の激減に苦しむ産地や生産者を支えるため、消費者が農産物を直接購入する「応援消費」の輪が広がるなど、国内農業への理解は深まった。輸入農産物の攻勢をはね返す好機と捉えたい。

 食料自給率(カロリーベース)は18年度に過去最低の37%を記録しており、30年度に45%まで引き上げる目標を達成する上でも重要である。

 農林水産省によると、コロナ禍影響で輸出を一時規制した国は、ロシアやウクライナなど19カ国に上る。これまでのところ日本で大きな問題は生じていないが、政府は食料の備蓄増強など食料安全保障に関する政策を強化することを決めた。農業産出額で全国の2割を占める日本の食料基地である九州が、どう役割を果たすのかも明確にしておきたい。

人材確保と省力化

 前提となる安定供給には、担い手の育成・確保が欠かせない。リポートは、海外からの人材が重要な労働力になっている現状も指摘している。

 中でも昨年4月に新設された在留資格「特定技能」によって、九州では今年3月末時点で175人が働いており、このうち熊本県は66人で九州最多となっている。

 ただ今回のコロナ禍で入国制限の影響を受けた農家もあり、担い手を海外に依存することの危うさも浮き彫りになった。

 生産・物流コストの低減や高収益作物の導入などで収益力を高め、国内での担い手確保に努める必要がある。ロボットや人工知能(AI)など最新技術を活用する農業のスマート化で、省力化も進めるべきである。

 自然災害も含めさまざまな要因で経営が左右される農業だが、生産基盤は一度失ってしまうと容易には戻らない。持続可能な地域農業の将来像をどう描くか、消費者も一緒に考えたい。

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June 27, 2020 at 02:00PM
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