スマート農業が実装されれば、日本の農業生産は維持・拡大できる。
三輪泰史(みわ・やすふみ)/日本総合研究所 創発戦略センター エクスパート。1979年生まれ。2004年に東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻を修了し、日本総合研究所へ入社。以来、農業分野を専門とし、農林水産省などの有識者委員も歴任(記者撮影)
高齢化や耕作放棄など課題が山積する日本の農業を再興する切り札に「スマート農業」がある。作業効率化やデータ活用を農業経営で実現するテクノロジーツールの総称だ。大手製造業やIT企業が商用化を目指し、さまざまな製品やサービスを開発してきた。
しかし、近年は大手企業のサービス撤退や事業縮小が相次ぎ、なかなか普及率は上がらない。日本のスマート農業にまだチャンスはあるのか、先進農業技術や日本農業の海外展開に詳しい日本総合研究所・創発戦略センターの三輪泰史エクスパートに話を聞いた。
――日本でスマート農業はどれほど普及していますか。
すでに実用化レベルに達しており、ラインナップとしてもいいものが出揃っている。ただ普及についてはかなり苦戦している状況で、日本の農業全体を100とするとスマート農業の普及率はまだ1桁だ。
苦戦の理由は大きく2つある。1つ目はコストが高いことだ。例えば自動運転トラクターは通常のトラクターよりも300万~400万円ほど高い。多くの農家は「300万円もプラスで払うぐらいなら自分で運転する」となる。
2つ目は操作の難しさだ。農薬の散布などに使用するドローンでは、講習を受けてちゃんと飛ばせるようになった後、モニタリングやピンポイントでの散布など扱えるまでのハードルが高い。またドローンの導入に30万~50万円かかってしまう。
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