コロナ禍で農業に関心を持つ人が増えたといわれている。副業として、また本業として農業を志す人が増えていると思われる中、農業に深い思いを抱き、長年従事している熟練の農業人はどんな考えを持っているのか。今回は、農業人をよく知る、「大地にやさしい農業」を応援するSHARE THE LOVE for JAPANという団体にインタビューした。農業に関心のある人は、ぜひ農業人の特徴を学んでみよう。
コロナ禍で農業へ関心を持つ人が増加
コロナ禍で働く環境が大きく変化した中、農業へ関心を持つ人が増加している。
農林水産省によれば、2020年度の就農希望者向け相談会への 来場者数は9月以降増加しており、農業への関心の高まりを示唆するものとされている。
実際、2020年に開催された「新・農業人フェア来場者数」の統計によると、9月期の農業EXPOは来場者数1,209人で、前年比199%、11月期農業EXPOは、来場者数560人で、前年比178%、12月期農業就職・転職LIVEの来場者数219人で、前年比166%と大幅増加となった。
出典:「新型コロナウイルス感染症による影響と対応 特集 - 農林水産省」
農業へと転職した人だけでなく、副業として農業を始めた人もいるとされ、農業は今後、注目を集める分野といえそうだ。
「大地にやさしい農業」実践農家57人のストーリーが記載された書籍が刊行
そんな農業に関心が高まり始めた今、注目の書籍が発売された。それは『SHARE THE LOVE 大地を愛する人々』と題した、「大地にやさしい農業」を実践する農家57人が、生命力あふれる自然の中で、大地と向き合う姿を力強く表現した写真とインタビューの書籍だ。農家一人一人の興味深いストーリーで構成されている。
編集と監修は「SHARE THE LOVE for JAPAN」Book制作委員会。SHARE THE LOVE for JAPANは、株式会社トゥルースピリットタバコカンパニーが運営するプロジェクトで、有機農業をはじめとする「大地に負担をかけず、自然に寄り添う農業をしたい」という農家たちの“想い”を支えるもの。
2011年の東日本大震災の影響で移住を決意した農家の支援から始め、各種の活動プログラムを通じて、農家がその想いを持ち続け、次の世代にも実り豊かな大地を未来に受け継いでいくこと目標に活動。今年2021年で10年目を迎えた。その記念として今年11月9日に発売されたのが、この書籍だ。
「この本を通して、より多くの方々に、個性豊かな農家の生き方に出会い、これほどまでに多様な人たちを惹きつける農の懐の深さを知っていただきたい。そんな思いから誕生した1冊です。
頻発する自然災害や、コロナ禍に見舞われた閉塞感の中で、既存の大量消費社会の価値観を超えて、真の豊かさや幸せを求め、大地と共に生きるようとする農家の姿には、希望のある未来を生きるためのヒントが潜んでいることでしょう」(SHARE THE LOVE for JAPAN主宰者より)
SHARE THE LOVE for JAPANに聞く!農業人が共通して持つものとは
農業や農業人はどのような考え方を持っているのか、その志などを知るべく、SHARE THE LOVE for JAPAN主宰会社の大内 浩子氏にインタビューを行った。
―コロナ禍で農業への関心が高まっています。この状況についてのご感想をお聞かせください。
「『農業への関心が高まっている』のであれば、うれしいことです。一概に言えないかもしれませんが、リモートワークが進み、必ずしも都心で暮らさなくても良いという状況の中で、土に触れたり、自然の中で時間を過ごすことに豊かさを感じる人は増えているのかもしれません。私たちSHARE THE LOVE for JAPAN(以下、STL)は、農業の中でも、特に『大地にやさしい農業』を応援していますから、豊かな自然を未来に届けるために農業に取り組む。農業のそんな側面にも、関心を寄せていただけたらうれしいですね」
―これまで多数の農業にかかわる方々を知り、お話しする中で、共通することや想いをお教えください。
「STLの参加農家は、『大地にやさしい農業』に取り組む方々なので、共通する思いは、『大地や自然環境を守り、次世代に引き継ぐこと』『安心安全な食べ物をつくり、届けること』に尽きるのではないかと思います。みなさん、作物を作ることだけが目的ではなく、その先に叶えたい未来や信念を持っています。例えば、生命力豊かな大地を継承したい、日本の中山間地域や里山を守りたい、地域文化を担いたいなど。
お人柄はそれぞれ違っていますが、内面に『芯の強さ』があって、そこから行動をおこす人たちではないかと思います」
―「大地にやさしい農業」の魅力をお教えください。
「一言では伝えきれないですね。多様で個性的な農家の姿がそこにはありますから。今回、出版した書籍は、57名の農家の生き方や考え方をまとめた本になります。240ページの長編ではありますが、ぜひ、手にとって、読んでいただきたいです。
この本の中から、『大地にやさしい農業』に取り組む農家がもつPhilosophyについて語っている一文をご紹介したいと思います」
農家として自由な発想と行動で、自分が暮らす地域の特性を生かしながら、持続可能性の高い「大地にやさしい農業」を営み、人々の暮らしを潤していくこと。
(「SHARE THE LOVE 大地を愛する人々」本文 Philosophy P195より)
―これから農業を志す人へ、コメントをお願いします。
「私たちSTLも、手探りで、10年間、大地にやさしい農業を志す農家のみなさんと一緒に活動を組み立てきました。
・地域や師弟関係を超えて、先人から農業技術を学ぶ機会をつくる
・自分の言葉で自分の農業について語り、その想い発信する機会をつくる
・同じ志を持つ仲間が集い交流やマルシェイベント等を開催する機会をつくる
などが主な活動です。
実際に参加している農家のみなさんから『有意義だ』と言ってもらえるプログラムが継続しているのだと思います。STLの参加農家のみなさんを見ていて言えることは、『大地にやさしい農業』は、決して「やさしい道」ではないということです。自然を相手にするお仕事は思い通りにいかないことも多いと思いますし、孤独な闘いを強いられることもあるのではないでしょうか。そんな中で、やはり、お互いに叱咤激励する仲間がいること、そういう関係をつくることが大事なのではないかと思います」
農業人に共通する「芯の強さ」と志を知ることができた。これから農業を始めるにあたって、ただ「作物を作る」ことだけでなく、「その先に叶えたい未来や信念」を、まずは明確にすることが必要なのかもしれない。そして仲間づくりも重要視したい。
取材・文/石原亜香利
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December 29, 2021 at 08:22AM
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