俳優の工藤阿須加(30)が、脱サラ就農のリアルに迫る「工藤阿須加が行く 農業始めちゃいました」がBS朝日で12月19日に放送される。映画やテレビドラマで存在感を示す俳優の成長株は、「今動かないと間に合わない」と自身も農業に取り組みだしたばかり。取材に対し、同じ目標に向かう人々の姿に「自然相手で何の保証もない中でひたむきに取り組む熱量がすごかった」と語り、農業法人設立の夢など新たな地平も示してくれた。(読売新聞オンライン 旗本浩二)
「子どもの頃、体が弱かったんですが、家族は食事を活用して治す選択をしてくれた。それで今では全然、病気をしないくらい体が強くなりました」と明かす工藤。「人間は手に取ったものを口に入れ、それが血となり、肉となり、骨となる。口に入れるものの大切さは小さい頃から実感していました。父親(工藤公康・プロ野球ソフトバンク前監督)が体を資本とする仕事だったので、それを気遣った母が(栄養などの)様々な専門家や農家の方と会う機会が多かった。そうした話の中から、自分が何をすべきなのか考えたときに農業という選択肢がずっとあったんです」
東京農大に進学したのもその志を持ち合わせていたからで、その後も役者の仕事を第一に考えながら農業の勉強もコツコツ続けてきたという。
転機は今春、コロナ禍で思うように仕事ができなくなった時だった。「自分と向き合う時間がすごく多くなって、それでいろいろ考えたんです」。あくせくした暮らしに疲れ、田舎で農業を始めたいと考える都会人は多いが、先立つものを考えればなかなか踏み切れない。しかし「お金ができてから、時間ができてからと待っていたら、たぶん間に合わない。40、50歳から始めるのでは体力的にも難しいし、今から始めて様々なプロセスを経た上で40歳を迎えるのと比べたら、大きな差が出る。逆に今、リスクを取らないことの方がリスクなんじゃないか」。
実入りが減って生活が厳しくなろうと、誰かに何かを届けたいという情熱があるなら、動いてみよう。そう決意して3月、ある農園の研修生として1区画を持たせてもらい、俳優業の傍ら、新たな一歩を踏みだした。栽培に挑戦したのは、大根や春菊、ミニレタス、ホウレンソウやカブなど。「あまり手を加えずとも、野菜たちがぐんぐん成長する姿を見た時、自然の力を実感するとともに、自分たちも自然に生かされ、その中で農業をやらせてもらっているとの感覚になりました」
本格的な出荷は来年以降となりそうだが、「ただ作っておしまいにはしたくない。いずれ会社を作るとか、団体を作るとかそういうことも見据えている」とも話しており、俳優業との兼ね合いもこの先の課題となりそうだ。農業を始めたことについて、父は「いいじゃないか、おれも手伝いに行く」と背中を押してくれているという。
根底には日本の農業を何とかしたいとの思いがあり、各地の農家と情報交換したいと常々思っていた。そこに持ちかけられた今回の番組は、仕事もこなしながら自らも学べるまさに渡りに船の企画だった。
番組は日本の農業従事者が減少傾向にある中、20~30代の若い新規就農者が増えている点をクローズアップ。今どきの“就農リアル”について工藤が現地ルポする構成となった。
工藤は、山梨県南アルプス市に2017年、川崎市から移住した元システムエンジニアの古川翔太(35)・京子(43)夫妻を訪ね、ビニールハウスも並ぶ2600平方メートルの農地でいっしょに汗を流した。現在はキュウリとスイートコーンを栽培する夫妻に工藤は、転職の一念発起をした後、今日に至るまでの過程や将来設計などについて尋ねていった。
「何より熱量がすごい。農業って、自然相手なので何の保証もないし、見えないところに飛び込むようなもの。それでもめげずに自分たちがどうすべきなのか明確な目標を立て、ひたむきにやってこられて実を結んでいる。それにお二人の人柄がステキでしたね」。自身も何かエネルギーのようなものを受け取った印象の工藤。農業に魅力を感じつつあと一歩が踏み切れない人たちへのメッセージを聞くと、自身の経験も踏まえ、二つのポイントを挙げた。
「一つは、もし具体的にどこかの土地で農業がしたいのなら、そこの自治体が農業に対してどんな施策をしているか事細かに調べてほしい。自治体によって違いがありますんで。そしてもう一つは、そこで何を求めるのかだと思います。例えば東京で飲んで騒ぐのが幸せだと感じていた人が、仕事がしんどいからって田舎に行ったところで、東京の感覚ってなかなか忘れられないと思うんですよ。そうでなく、自分たちがそこの土地に行って、何をどんな思いでしたいのか。それを明確にすべきでしょう。そうでないと必ず失敗する」
脱サラ就農の先輩たちの言葉を聞いた上で、まるで自分に言い聞かせるように話し、こう付け加えた。「環境も収入も大きく変わるし、安定も保証もない。だからこそたくさん悩んでほしい。でももし踏み切った時には、今まで見たことのない世界がたくさん広がっているのは間違いない」。放送は午後2時から。
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November 28, 2021 at 03:01AM
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農業選んだ工藤阿須加、父は背中を押してくれた「いいじゃないか、おれも手伝いに行く」 - 読売新聞
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