戦争の記憶の風化が進んでる。日本農業新聞が農業高校を対象に行ったアンケートで、満蒙開拓や学徒援農など戦争と農業者や食との関わりについて学んでいる学校はわずか1割にとどまることが分かった。7割が戦争との関わりを学ぶ意義を感じていながら、実際には実施できていない実態が浮き彫りになった。
調査は7、8月に実施。戦争と平和についての学びの実態を調べた。全国学校農場協会の協力の下、インターネットで実施。会員校375校のうち117校から回答を得た。 戦争と農業者や食との関わりを学ぶ機会を設けていたのは、12％に当たる14校だった。内容は「当時の農作業のやり方」が8校、「配給制などの食料事情」が5校、「食生活」が3校、「満蒙開拓」が2校、「学徒援農」が1校だった（複数回答）。 学ぶ機会がない主な理由は「実施する時間がない」が42％、「授業で触れる・修学旅行で十分」が34％、「詳しい教諭がいない」が31％だった（複数回答）。 戦争と農業者や食との関わりを農高生が学ぶ意義を感じるかとの問いに67％が「感じる」と回答した。一方で、今後機会があれば学ぶ機会を設けたいかとの問いには49％が「いいえ」と回答した。 意義について「現在の食料自給率の低さが有事における食料問題につながる」「食の大切さを知ってほしい」「当県から多くの人が満蒙開拓へ行っている」などの自由回答が寄せられた。 一方で、学ぶ機会を設けない理由に「時間がない」「カリキュラムにない」「資料がない」といった問題の他、「小中学校で平和学習を行っている」「過去より将来に向けての学習の方が良い」「もっと農業そのものを深く学ばせたい」との意見が上がった。
意義を感じながら実施できない現状に、平和学習に詳しい立命館大学の角田将士教授は「しっかりと学ばせるなら、カリキュラムで位置付ける必要が今後出てくるだろう。まずは各教科の学びの中で少しずつ取り上げてはどうか」と提案する。 その上で「悲惨な過去を伝える紋切り型の平和学習ではなく、これからの食と農の担い手である生徒自身が戦争との関わりに向き合い、今につなげる学びが求められる」と強調する。
日本農業新聞
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August 11, 2021 at 08:14AM
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