新型コロナウイルスワクチンの職場接種を巡り、河野太郎行政改革担当相は当初、企業側に積極的な申請を呼び掛け、ワクチン供給に余裕があることを強調していたが、申請の急増により、結局は受け付けを停止する事態を招いた。河野氏の発言の変遷をたどると、ワクチン確保の見通しの甘さが一層際立つ。
職場接種に使うモデルナ製ワクチンは、政府の契約量が5000万回分に限られる上、全ての輸入が終わるのは9月とされる。国や自治体の大規模接種会場でも使われるため、河野氏の記者会見では、ワクチンの不足を懸念する質問が繰り返されてきた。
職場接種の開始を発表した6月1日の会見でも、多くの企業が接種を希望し、ワクチンが足りなくなる可能性を問われた。河野氏は「ストップするくらい頑張って立ち上げていかなければいけないと思っているので、ぜひ手を挙げてほしい」と回答。その後、停止が現実になるとは想定もしていない様子だった。
その後も「供給は余裕がある」とし、職場接種に使えるワクチン量の上限についても「まだその心配をする量ではない」と語った。
発言のトーンが変わったのは22日。申請が急増する中でのワクチン確保の見通しを問われ「無尽蔵にあるわけではないので、どこかで上限に来ることはあろうかと思う」と説明。翌23日に申請の停止を発表した。
河野氏の一連の対応について、立憲民主党の安住淳国対委員長は30日、記者団に「『どんどんやれ』とあおっておいて、実際に注文したら『品切れでした』というずさんな計画だ。政府のやることではない。ある意味で詐欺だ」と批判した。(井上峻輔)
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