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Thursday, March 18, 2021

社説:4都県の宣言解除へ 懸念を拭う対策が必要だ - 毎日新聞

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 新型コロナウイルスの感染対策として首都圏4都県に出されていた緊急事態宣言が、期限の21日で解除される。

 期間が2カ月半に及び、経済への影響が長期化していることを政府は考慮したのだろう。政権内には、延長しても効果がないとの声もある。

 だが、打つ手がないとの理由で解除するのでは、国民の不安は払拭(ふっしょく)されない。

 確かに1日当たりの新規感染者数は、政府が解除の目安としてきた「ステージ3(感染急増)」相当となっている。病床使用率も、再延長を決めた2週間前よりは改善した。

 しかし、感染者数は横ばいから微増に転じている。専門家の間には感染が再拡大することへの懸念が強い。

 宣言期間を振り返ると、当初は、夜の会食による感染リスクが強調されて国民に伝わった。政府は途中から昼間の飲食にも注意を呼び掛けたものの、国民には届かなかった。

気を緩めてはならない

 再延長を決めた際には、感染者数を減少させるための新たな対策を打ち出さなかった。病床使用率の改善を図る期間と位置付けたためだが、2週間の再延長期間を有効に活用できなかったとの指摘が出ている。教訓を次に生かさなければならない。

 新規感染者数は全国で1000人を超え、昨年の第2波の水準と変わらない。花見や歓送迎会などのイベントがあり、感染リスクが高まる時期を迎えている。

 宣言の解除で人出や飲食の機会は増える。気を緩めずに対策を継続することが欠かせない。

 4都県は感染対策の柱である飲食店への営業時間短縮要請を、午後9時までに緩和した上で継続する。今月末までというが、期間が十分かどうか感染状況をみながら判断すべきだ。

 繁華街などでの感染拡大の兆候を探知するため、政府はモニタリング検査を実施する。体制の確立が急務だ。

 ワクチンは重症化や発症を防ぐ効果が期待されるが、接種は遅れ気味だ。高齢者の接種開始は宣言の解除に間に合わなかった。供給量が増える5月以降、円滑な接種ができる体制を整え、万全を期さなければならない。

 今後、特に懸念されるのが変異株の広がりだ。感染力が強いとされ、重症化リスクが高い可能性も指摘されている。すでに変異株の感染者数は増加傾向がみられる。

 政府は監視体制を強化する方針だ。ワクチンの効き目や感染しやすい年代など情報の収集と分析を進め、感染拡大を防ぐ対策を迅速に打ち出す必要がある。

 海外では新たな変異株も確認されている。水際対策を強化すべきだ。医療提供体制を拡充することも欠かせない。

 病床の確保と同時に、コロナ患者の急増に機敏に対応できるよう、手順をあらかじめ定めておくことが肝心だ。

 自宅療養する人の体調急変に、かかり付け医や訪問看護師などが対応する体制も整えなければならない。

再拡大防ぐ対応機敏に

 経済との両立を重視するあまり、感染対策をおろそかにすることがあってはならない。

 気がかりなのは、需要喚起策である「GoToトラベル」などの再開だ。地方の知事からは、感染が落ち着いている県から早急に再開するよう要望が出されている。

 観光業界が経営に苦しんでいる事情はあるが、再開を急ぎすぎれば感染のリスクが薄れたという誤ったメッセージを国民に送りかねない。慎重な判断が求められる。

 感染者数の増加傾向が明確になった場合は、早い段階で対策を強化することが大事だ。そうすれば、経済への影響を最小限に抑えることができる。

 感染の第3波が始まった昨秋、政府の対応は遅れた。「総合的な判断」を理由に決断をためらい、対策の強化が先送りにされたと指摘されている。

 今夏には東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されている。五輪への影響を懸念して対策強化に二の足を踏むことは許されない。

 政府は第1波、第2波の十分な検証を怠り、医療や検査の体制が不十分なまま第3波を迎えてしまった。同じことを繰り返してはならない。

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