Pages

Sunday, June 21, 2020

<かながわ未来人>藤沢で無農薬・有機栽培の農園 農業・井上宏輝(いのうえ・ひろてる)さん(43) - 東京新聞

 「存在が消えかけてるかも…。あ、あった」。勢いよく伸びていたのはスギナという雑草。その脇に、小さなオクラの芽がぴょんと顔を出していた。

 藤沢市の「にこにこ農園」は畑のうねでもお構いなし、隙あらば雑草が生える。除草剤も化学肥料も使わない無農薬、有機栽培を徹底しているからだ。「土を食べても大丈夫。そこは農薬をまいたから行っちゃダメとか、注意することを減らしたくて」。障害のある子や人がのびのびと過ごせて、保護者らも安心して見守れるようにとの思いからだ。「野菜だって、ちょっとくらい踏んづけたって大丈夫」。がはは、と笑う。

 大学卒業後に藤沢市立白浜養護学校で八年間働き、主に知的障害のある高校生を受け持った。「子どもの分も作るから」と保護者に弁当を差し入れられるほど信頼され、やりがいを感じていた。それでも、教え子の卒業後の選択肢があまりに少ないことに我慢ならず、自分がやろうと決めた。

 「進路を選ぶというより空いている福祉作業所に行くしかない子もいて、卒業式のときに心からおめでとうと言えないことが悔しかった」。農業高校出身で大学で微生物を学んだこともあり、農業の道へ。二メートルの雑草が伸び放題だった耕作放棄地を切り開き、二〇〇九年四月、同市獺郷など二カ所の畑で農園を開いた。

 教員と農業、共通点があるという。「特別支援学校ではコミュニケーションの難しい子の顔をじっとみて、もしかして今トイレに行きたいのかな、と気付いて促したり。今は土の中で何が起きてるのか、じっと考えてる。じっくり関わるのは自分に向いていた」

 誰でも使えるトイレなどハード面の整備が難しく、まだ特別支援学校の卒業生は迎えられていないが、障害者雇用でこれまで二人を受け入れた。このうち植木政広さん(46)は時折調子を崩して休みつつ、一一年から働き続ける。「土をいじっているのが精神的に良い。やればやるほど成果が出るわけじゃないけど、それが奥が深い」。もう一人は八年働いた後、請われて老人ホームの職員になった。

 目指すのは「いろんな人と一緒に農業をやってるただの農家」。地域の高齢者や子どもが集まり、土に触れたり野菜の育ちを見守ったりして癒やされる。その輪の中に障害者もいるけれど、どの人なのか誰も分からず、誰も気にしない。「そんなカオスみたいな農園が理想です」 (石原真樹)

<にこにこ農園> 藤沢市獺郷など市内4カ所の計約1.3ヘクタールの畑で、在来種を中心に年間100種類ほどの野菜やハーブを露地栽培。市内外の飲食店約10店舗と個人宅約120世帯に旬のものを届ける。イベントの出店情報などはフェイスブックで。問い合わせは井上さん=電090(1059)4849、メールinfo@nikoniko-nouen.com=へ。

関連キーワード

Let's block ads! (Why?)



"農業" - Google ニュース
June 22, 2020 at 05:20AM
https://ift.tt/3fLqmBg

<かながわ未来人>藤沢で無農薬・有機栽培の農園 農業・井上宏輝(いのうえ・ひろてる)さん(43) - 東京新聞
"農業" - Google ニュース
https://ift.tt/2SkudNe
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

No comments:

Post a Comment