3月25日に食料・農業・農村政策審議会が答申した新たな食料・農業・農村基本計画の副題は「わが国の食と活力ある農業・農村を次の世代につなぐために」。基本計画本文では、少子高齢化と人口減少が本格化するなか、農業者や農地面積が減少し続け生産現場は依然として厳しい状況に直面していると記述。しかし、農業・農村がもたらす恵みは都市住民を含む国民全体の生活に利益をもたらしていることも指摘している。
こうした農業・農村の持続性を高め次世代に引き継いでいくために、「農は国の基」との認識が国民全体で共有される必要があるなど国民理解が必須であることを強調した。
3月25日の食料・農業・農村政策審議会
新たな基本計画の検討は昨年9月に農林水産大臣が諮問して企画部会での議論がスタートした。企画部会は13回開かれたほか、地方意見交換会を10回開いた。諮問前の3月から6月にかけては農業者ら36名からヒアリングをしている。
企画部会委員の中家徹JA全中会長はコロナウイルス感染症が拡大するなかで、新基本計画を策定したことについて「深刻な事態を教訓にして、海外に依存することのリスクを改めて実感しなければならない」と指摘。今回は想定外の事態のなかで新基本計画の実践をスタートさせることになるが、中家会長は深刻な事態だからこそ「前倒しで(基本計画を)実践していかなければならない。成果を出すことで逆境をはねのける力にならなければならない」と強調した。
今回の基本計画には「食と農に関する国民運動の展開を通じた国民的合意の形成」が必要だと記述した。食農教育や地産地消など取り組みについて「消費者、食品関連事業者、農業協同組合をはじめとする生産者団体を含め官民が協働」して幅広く進め、新たな国民運動を展開するとした。
25日の審議会でもこの基本計画について国民にいかに伝えるかについて意見が出た。
日本総合研究所創発戦略センターの三輪泰史エクスパートはSNS、インターネットでの補完も必要と指摘。また、計画の達成状況についても企画部会で検証すると同時に国民に知らせるべきだ提起した。「苦戦しているところがあれば国民の力を借りる。もっと応援してもらえるようにすべきだ」と話した。
専門委員の農政ジャーナリストの大山泰氏は「今回の基本計画の狙いは国民に食と農の重要性を理解してもらうこと」と強調し、コロナ感染症の拡大という状況のなか「生産基盤が脆弱になってしまうと、何か異変が起きたときに大変なことになってしまうという思いを持つべきだ」と話した。
千葉県柏市の染谷農場の染谷茂代表取締役は「外国から食料が入ってくるのは当たり前ではない。国民に自分たちの食料を心配するのは自分たちであると思ってもらえるようにしなければならない」と話した。
日本農業法人協会の近藤一海副会長は「自給率をこれ以上下げないようにしなければならない」と強調した。また、高齢化が深刻化する農村の振興対策なども含めて、基本計画の実践をPDCAサイクルを回してしっかり検証することが重要だと話した。
生産者の栗本めぐみ氏は「食べることは生きることであることが国民に伝わることが重要。農業者にとっては、みんなが生きることを担っているという誇りと責任を感じてもらう。基本計画がその道しるべになれば」と期待した。
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March 27, 2020 at 01:02PM
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基本計画前倒しで実践を 食農審で中家全中会長が強調 - 農業協同組合新聞
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