Pages

Thursday, August 12, 2021

食と農のメディア会議(1)日本の農業・農村の針路 - 日本農業新聞

 日本農業新聞は7月27日、紙面や報道の在り方について外部有識者に意見を聞く「食と農のメディア会議」を開きました。新型コロナウイルス禍で農業・農村を巡る環境が大きく変わる中、「食」と「農」の総合情報メディアとして、どのように役割を果たすべきか、多様な立場から委員が提言しました。専門情報の充実と並び、消費者や若者にも関心を集める情報発信、都市と農業をつなぐ役割などのアドバイスが寄せられました。電子版を含むデジタル分野への期待も高く、紙媒体を飛び越えて幅広いニーズに対応できる事業展開を求める声も相次ぎました。(司会は岡田健治論説委員室副室長)

委員

  • 小田切徳美氏(明治大学農学部教授)
  • 荒川隆氏(食品産業センター理事長)
  • 秋元里奈氏(食べチョク代表)
  • 岡田啓太氏(東京農業広報大使)

社会課題解決の先進地に 小田切委員

 ――日本の農業・農村は今後、どの方向に向かっていきますか。

 ■小田切委員 今、社会に大きな波が三つ来ています。一つはコロナです。過密による感染拡大を受け、低密度という価値が新たに生じ、低密度利用型産業である農業に積極的な役割が生まれています。コロナ禍で都市と農村などさまざまな局面で分断が進んでいる中、「つながり消費」に象徴されるように、分断されたものをつなげていく役割が農業・農村にはあります。

 二つ目は新しい産業構造です。農業には循環型産業を作り出す役割が本来的に備わっています。イノベーションの原理が「結合」だとすると、農福連携のように、農業・農村はいろいろな要素を組み合わせることができる。イノベーションを内発的に起こせる場が農村だと思っています。

 三つ目は気候変動です。極端な脱炭素化の動きに農村は翻弄(ほんろう)される一方、それに対して積極的に対応できるとも考えます。国内農業を拡大し、食料自給率を上げてフードマイレージを縮減することで、環境負荷を抑えることにつながります。

 ■荒川委員 この10年、政府は地域政策よりも産業政策に軸足を置き過ぎました。産業政策は「強い農業」をつくろうとする政策。規模を拡大し、生産性を上げ所得が増える農家がいる一方、かえって離農が進み、農村の多面的な広がりが損なわれてしまったことがようやく実感されてきました。

 競争して強い人を後押しするのは資本主義のルールとして当然ですが、効率は悪くても多くの人がそれなりに満足して暮らせるのも大事で、そういう場が日本の農村の津々浦々にあるというのはとても大切なことです。

 少子高齢化や人口減少は避けられませんが、それに少しでもブレーキをかけられる地域政策の後押しが重要です。コロナをきっかけに都会の人もようやく気付いてきましたが、これを機に農業・農村を見詰め直してもらい、安寧のある、温かい協同共生社会をつくっていくべきだと思います。

地域超えつながる時代に 秋元委員

 ■秋元委員 大きく変わると思うのは「つながり方」です。コロナを機に情報伝達のスピードが上がりました。生産者がオンラインで発信し、消費者は地域の情報を気軽に手に入れられるようになりました。自分と似た思想を持つ、あるいは同じ育て方をしている農家と、地域を超えてつながる例が増えています。

 今までなかったつながりがどんどんできています。積極的に情報を取りに行く人は今までより早く世の中の動きを察知し、手を打つことができています。一方で、その波に取り残される人も出ていて、そこに情報ギャップが生まれ、格差が広がっています。

 つながり方の変化によって、ビジネスという意味での農業の選択肢は広がっています。一方、そのメリットを享受できない人をどう巻き込んでいくのかが私たちの課題です。高齢の方が取り残されがちなので、自治体との連携を強めていますが、うまく全員が乗っかっていく仕組み作りが大切です。

 ■岡田委員 われわれ生産者は野菜や果実、花を作って届ける一方、畑(農地)を持っています。畑の役割にはいくつもあり、例えば広大な敷地は一つの緊急避難場所になります。休日にはレジャーの場となり、食育の場ともなります。近年、ゲリラ豪雨など水害の被害が大きいですが、畑は治水にも貢献しています。

 私のいる東京では近隣に人がいますし、こういうことを知ってもらう努力がますます重要だと考えます。生産農産物を送るだけでなく「畑にいつでも来ていいよ」という状態にする変化が求められていると思います。

 住民の理解なくして農業はありません。最近ではコロナでJAの直売所が見直され、農業を直接感じてもらえる効果もありました。生産者が畑に立ち、顔を見せ、言葉を発信していく。そこから興味を持ってもらえるようにしていきたいです。

 ――ネット販売や直売所などを通じて、生産者と消費者の距離は近づいてきたと感じています。一方で「分断」や「格差」という言葉も出てきました。

 ■秋元 食に関心のある人の間では「つながっている」と感じていますが、調査の数字を見ると、生産者から直接買っている人はそれほどいません。また、価格面が優先されていて、「生産者とつながりたいから」という人はまだ少ない。生産者も食に関心の高い一部の消費者以外とつきあいがないので、そういう人たちにどうリーチしていけばよいのかという議論をよくしています。

 ■小田切 秋元さんが言われたのは食と農の問題。これを地域問題に引き寄せると、新しい問題、新しい格差が出てきます。従来は都市と農村の格差でしたが、これからは同じ農村内でも格差が広がっていくという新しい局面に入りました。新しいつながりを求める動きに乗り切れない生産者や消費者が出ており、ここに、協同組合や政策の出番があるはずです。

 ■荒川 意識の高い人は安心安全、新鮮、国産という要素を価格よりも大事にして選択します。一方、統計的にはいくらやっても食料自給率が上がりません。昔、ある調査で「3割までの価格差なら国産を選択する」という結果が出ましたが、実際にはかなり多くの人が給与も上がらず、価格面でシビアな選択をしています。いかに国産の良さをしっかりアピールしていくのか、多くの消費者に価値を感じてもらえるのか。それが政策の使命であり、新聞の使命でもあるかもしれません。

 ■岡田 生産者の実感から言うと、地域単位では生産者と消費者は近づいていると感じています。コロナをきっかけに地場産を、顔の見える安心感をと、消費者のマインドが変わってきたようです。一方で、身近に畑がない、生産緑地がないという人は全国に多い。もっといろいろと発信して距離を縮めていく努力が必要だと感じています。

▶食と農のメディア会議(2)農業・農村活性化のキーワードに続く

Adblock test (Why?)



"農業" - Google ニュース
August 13, 2021 at 04:04AM
https://ift.tt/2XpisJV

食と農のメディア会議(1)日本の農業・農村の針路 - 日本農業新聞
"農業" - Google ニュース
https://ift.tt/2SkudNe
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

No comments:

Post a Comment